巨大地震対策、訓練重ねて柔軟な運用を
政府の中央防災会議は南海トラフ巨大地震に備え、人命救助や物資輸送などの応急活動の方針を示した計画をまとめた。
各地の自衛隊や警察でつくる緊急応援部隊、最大14万2600人を72時間以内に被災地に派遣するというものだ。柔軟に運用できるように訓練を重ねる必要がある。
10県を重点的に支援
計画の柱は、甚大な被害が見込まれる静岡、愛知、三重、和歌山、徳島、香川、愛媛、高知、大分、宮崎の10県を重点的に支援することだ。災害発生後72時間を過ぎると人命救助の可能性が大幅に低下する。計画では72時間以内の救援を目標とし、そのために各関係機関が何をすべきかを時系列表で示した。
最新の被害想定によれば、南海トラフ地震の死者は最悪32万人以上に上る。地元の警察や消防だけでは対処しきれない地域が広範囲に及ぶとみられており、計画では10県に最大で自衛隊約11万人、警察約1万6000人、消防約1万6600人を派遣する。
海や空での移動のため、最大でヘリコプター計約480機、航空機約140機、船約470隻も出動する。応援部隊が迅速に活動するには、日頃からの訓練が重要となる。
物資輸送については、国が食料、毛布、おむつ、粉ミルクなど避難生活に欠かせない日用品を被災自治体の要請を待たずに実施するとしている。これは東日本大震災の際、役場が津波に流されるなどして要請に時間がかかったためだ。
災害発生から3日間は備蓄の物資で対応してもらい、4日目には支援が届くようにする。各自治体や家庭などで十分な備蓄が求められる。
また道路の寸断があった場合に備え、応急活動に使う緊急輸送ルートを指定。ルート上などに位置するガソリンスタンドに、資源エネルギー庁が石油精製業者と連携して継続的に燃料を補充する。
南海トラフ地震では入院が必要となる重症者が最大15万人に上ると想定されている。計画では被災地の医療体制強化のため、内陸部で被害が比較的軽微とみられる静岡など6空港に災害医療派遣チーム(DMAT)を重点的に配置する。
6空港は負傷者らを積極的に受け入れ、治療の優先度を判定する「トリアージ」や応急処置を行う「臨時病院」の役割を担う。被災地内の医療機関を含め、耐震強化を徹底することが欠かせない。
一方、政府は首都直下地震対策の基本計画の一部見直しを決定した。住宅耐震化率向上など、この10年間に講じる対策で、最大の数として現在想定する死者2万3000人、全壊・焼失する建物61万棟をともにおおむね半減させるとしている。
計画には、地震が起きても日本の政治や経済の要となる首都の機能を継続させるため、庁舎が被災した場合に備えて今年中に代替庁舎を確保することも盛り込んだ。
災害に強い社会づくりを
災害に強い社会づくりを進めるには「自助」「共助」を含め、官民が一体となって取り組む必要がある。
(4月2日付社説)