日中韓協議、関係改善の好機とすべきだ


 日本と中国、韓国のアジア主要3カ国による外務次官級協議が先日、約半年ぶりにソウルで開催された。月内開催で調整を進めている外相会談では、さらにその先の首脳会談も視野に入れて話し合いがなされる見通しで、日本としては冷え込んでいる中韓との関係を改善させる好機とすべきだ。

 喫緊の課題は北朝鮮

 安倍晋三首相は昨年11月、北京で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席した際、習近平国家主席と会談し、約3年ぶりとなる日中首脳会談を実現させた。これが日中韓の政府間協議に弾みを付けた。

 次官級協議の議長国・韓国は、今回の協議について3カ国の関係が修復に向かっていることを示すものとの認識を示した。ここ数年、歴史認識問題などをめぐり日本と中韓との溝は深まる一方だっただけに、ここまでこぎ着けたことは評価できる。

 日中韓首脳会談は麻生太郎政権時の2008年、リーマン・ショックを引き金とする世界金融危機の際に開かれて以降、開催国を毎年持ち回りにして行い、韓国の李明博大統領(当時)が竹島に上陸し、天皇陛下に事実上の謝罪を求める発言をした12年を最後に開かれていない。

 日中韓にとって喫緊の課題は、域内の安全保障を脅かし続ける北朝鮮への対応だ。最高指導者の金正恩第1書記は“先代”からの核開発路線を踏襲し、弾道ミサイルに搭載可能な核の小型化を急いでいると言われる。こうした危険極まりない武力挑発主義は、伝統的な友好国である中国にとっても頭痛の種だ。

 世界第2位と第3位の経済大国である中国と日本の景気や貿易の動向が世界経済に与える影響力の大きさを考えても、韓国を含めた域内経済主要国同士による連携と協力は重要だ。

 訪日したドイツのメルケル首相や潘基文国連事務総長は、歴史認識をめぐりぎくしゃくしている中韓との関係を改善させるよう日本に注文したとの報道もあったが、何より欠かせないのは未来志向的な発想である。互いに非をあげつらい続けるような負の連鎖を断ち切るリーダーシップが問われることになる。

 一部で日中韓の協力に懐疑的な見方があるのも確かだ。特に韓国が中国との関係強化を重視するあまり、歴史認識をめぐり「日本対中韓」の構図で語られることが多くなった。

 日韓両国は本来、自由民主主義と市場経済という共通の価値観で結束すべきだが、この関係にくさびを打とうとしている中国の戦略を警戒すべきだ。

 韓国は、高高度ミサイル防衛体系(サード)の導入に反対し、自らが主導する「アジアインフラ投資銀行」への加入を促す中国の真の狙いが何かを見 極める必要がある。

 日本と直に向き合え

 現政権発足後、2年以上も首脳会談を開催できずにいる日韓の場合、今年が国交正常化50年という大きな節目に当たることを忘れてはなるまい。特に韓国の朴槿恵大統領は、第三国を交えた枠組みに執着するのではなく、日本と直に向き合って懸案解決に取り組んでほしい。

(3月17日付社説)