尖閣広報、地道で粘り強い取り組みを
外務省は、中国が沖縄県・尖閣諸島の領有権を主張し始める前の1969年に中国当局が作成した地図をホームページ上で公開した。
地図では、尖閣が「尖閣群島」「魚釣島」などと日本側の呼称で記載されている。中国が当時、尖閣を日本の領土だと認識していた裏付けとなるものだ。
執拗に攻勢強める中国
今回の公開に対し、中国外務省の洪磊・副報道局長は「釣魚島が中国に属するのは否定できない事実だ。1、2枚の地図を探し出したところで覆せるものではない」と反論した。
だが公開された地図には、中国が用いている呼称の「釣魚島」は記されておらず、説得力は乏しい。
何度でも繰り返すが、尖閣は歴史的にも国際法上も日本固有の領土である。日本は1895年1月、他の国の支配が及んでいないことを慎重に確認した上で領土に編入した。
この時、中国は異議を唱えていない。尖閣を日本領土と認めていたことは間違いないと言える。尖閣では一時、200人以上の日本人が生活し、かつお節工場などが運営されていた。中国が領有権を主張するようになったのは、国連機関が尖閣周辺の石油埋蔵の可能性を指摘した後の1971年からだ。
日本外務省はこれまでも、尖閣が日本固有の領土であることについて発信に努めてきた。2010年9月に尖閣沖で生じた中国漁船領海侵犯事件の直後には、1972年に外務省情報文化局が作成した冊子「尖閣諸島について」を基にホームページの充実を図った。
しかし、中国は攻勢を強めている。特に日本が尖閣を国有化した2012年9月以降は、中国公船による尖閣沖の領海侵入が常態化した。昨年11月には安倍晋三首相と中国の習近平国家主席による首脳会談が実現したが、その後も領海侵入は続いており、今年に入ってからもすでに7回を数えた。このほかにも、中国は13年11月に尖閣を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定するなど、一方的な行動に出ている。
執拗(しつよう)に領有権主張を繰り返す中国に対抗するには、地道で粘り強い広報の取り組みが不可欠だ。外務省は今後も一層の工夫を重ねる必要がある。
岸田文雄外相は今回の地図に関して「尖閣が日本の領土であることを前提として作成されたものであると考えられる」と述べている。今月開かれる日中韓外相会談では、中国公船の領海侵入に抗議するとともに、不当な主張を撤回するよう求めるべきだ。
広報とともに重要なのは、安全保障体制の強化だ。昨年7月に集団的自衛権の行使容認が閣議決定され、現在は安保法制整備に関する与党協議が行われている。日本の領土・領海・領空を守り抜くための実効性ある法整備を実現してほしい。
領土教育の一層の充実を
日本の一部の有識者が、中国の領有権主張を支持するかのような見解を示しているのは憂慮すべきことだ。日本の将来を担う若い世代のために、領土をめぐる教育の一層の充実も求められる。
(3月18日付社説)