日独首脳会談、国際法秩序維持に強い連携を


 訪日したメルケル独首相と安倍晋三首相が会談し、緊張状態にあるウクライナ情勢の安定に積極的に協力していくことなどで合意した。

 6月にドイツで行われる先進7カ国首脳会議(G7サミット)を前に「力による現状変更」を認めないことで連携を強め、国際法秩序の維持のために結束を図る必要がある。

 ウクライナ安定で一致

 メルケル首相は2月、ロシア、ウクライナ、フランスとの4カ国首脳会談で合意文書をまとめるなど、ウクライナ政府軍と親ロシア派との停戦に主導的な役割を果たした。

 同首相は旧東独出身で旧ソ連・東欧など旧社会主義諸国の変革を身をもって体験した。プーチン露大統領とも親交がある一方、欧州連合(EU)加盟に向けての連合協定締結を求めたウクライナの民主派にも理解を示していた。

 また、安倍首相もプーチン大統領との関係を深め、北方領土問題解決のために日露関係の打開を模索していた。ウクライナ危機を受けて対露制裁を科しているが、年内の大統領訪日実現も目指している。

 首脳会談後の共同記者会見で安倍首相は「ウクライナの平和と安定に積極的な役割を果たすことで一致した」と語った。停戦合意を順守するようにプーチン大統領、ウクライナのポロシェンコ大統領に働き掛ける必要がある。親露派の優位は軍事大国のロシアが背後にいるためとみられ、停戦にはロシア側の自制と監視が不可欠だ。

 合意が守られず、親露派の攻勢がさらに強まれば、米英のウクライナへの武器援助を後押しする世論が高まろう。しかし、冷戦時代のような対立は米国やロシア、EU諸国にとって何の益にもならない。このため日独は対露制裁も抑制してきたが、両首脳のロシア側への説得と外交努力に期待したい。

 日本はEUの主要国であるドイツとの交流を一層深めるべきだ。メルケル首相が日本を訪れたのは洞爺湖サミット以来7年ぶりで、日独関係は疎遠だったのではないか。このことは、メルケル首相自身が今回の訪日について「とても興味深かった。日本との関係を強化する意義があるのは確かだ」と語ったことに示されていよう。

 一方、メルケル首相は中国には5回も訪問しており、中国首脳の訪独も頻繁である。その中で、中国は敗戦国であるドイツの「反省」を称賛し、日本に見習うように求める言動を繰り返した。韓国も同様な行動を取ってきた。

 メルケル首相はドイツの経験を踏まえて「過去の総括が和解の前提となる」と語ったが、再三にわたり反省と謝罪を表明してきた戦後日本の歩みを伝える努力は怠ってはならない。

独に対中要請を期待

 また、首脳会談で安倍首相は東アジアの安全保障環境について説明したという。深刻なのは島嶼(とうしょ)をめぐる「力による現状変更」の試みだ。このような脅威を日本、ベトナム、フィリピンなどの諸国が感じており、国際法秩序を守るようにドイツ側が中国にも要請していくことを期待したい。

(3月12日付社説)