陸自賛成多数、良識的判断下した与那国町民


 沖縄本島から南西約500㌔に位置する日本最西端の与那国島(沖縄県与那国町)への陸上自衛隊「沿岸監視隊」配備の賛否を問う住民投票が実施された。結果は賛成632票、反対445票だった。

 島の活性化に繋がる配備

 住民投票は、昨年9月7日の町議会議員選挙(定数6)で、基地誘致賛成派、反対派が同数となったのを受けて、反対派が住民投票の条例案を提出し、実施が決まった。

 住民投票は1284人に投票資格があり、選挙権のない中学生41人や永住外国人5人にも投票資格が与えられた。

 本来、地方自治体が国の専権事項である安全保障問題で住民投票を行い、永住外国人にも投票資格を与えたことは、憲法違反そのものである。

 住民投票に法的拘束力はないが、配備反対票が賛成票を上回る結果になっていたとすれば、他の基地問題でも反対派を勢いづかせることになった。町民は良識的判断を下したと言える。

 現在、南西諸島は沖縄本島以外には陸自が常駐していない空白地帯となっている。与那国島に至っては、武器といえば駐在所の2人の警察官が所持する拳銃2丁しかない。武装した中国人が海岸から不法上陸してきた場合、島民を守ることは到底できない状態が続いている。

 昭和47年の本土復帰直後、与那国町議会が自衛隊誘致を決議したのを皮切りに、その後も誘致する声は島内にあったが、反対派の勢力の運動によって頓挫していた。

 今回、沿岸監視隊は平成27年度末までに約150人規模で配備される予定だ。同隊は情報科職種の隊員を主力として、付近を航行、飛行する艦船や航空機をレーダーなどで監視し、各種兆候を早期に探知する任務を担う。

 沿岸監視隊が与那国島に配備されれば、島民の安全確保だけでなく、過疎化対策にもなる。加えて、自衛隊の医官の派遣によって島民への医療支援も行われ、いざという時の健康不安も解消される。長期的には、毎年10億円以上の経済効果が見込め、島の活性化にも繋がる。

 ここ数年、中国は東シナ海において、挑発的な動きを繰り返している。中国軍ヘリの海上自衛隊護衛艦への異常接近のほか、連日のように尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域では中国公船が確認されている。平成25年11月には、東シナ海上空に尖閣諸島上空を含む「防空識別区」を設置した。中国の狙いは、尖閣諸島への領有権を既成事実化することにある。

 実際、中国は尖閣諸島から約300㌔北西にある浙江省・南●(=鹿のしたに几)列島の南●島にすでに数基の最新鋭レーダーを設置し、滑走路も完成させている。

 この滑走路が実際に使用されることになれば、中国の戦闘機は尖閣諸島に航空自衛隊よりも早く到達することが可能になるだろう。

 対中牽制に有効な抑止力

 中国は尖閣諸島だけでなく、東シナ海の制海権、制空権を確保することを目論(もくろ)んでおり、与那国島への沿岸監視隊の配備は、中国の動きを牽制(けんせい)する上で、有効的な抑止力となる。

(2月27日付社説)