国際社会は「イスラム国」壊滅に全力挙げよ
過激組織「イスラム国」は拘束中のヨルダン軍パイロット、モアズ・カサスベ中尉を殺害したとする映像をインターネット上に公開した。
中尉とみられる男性は生きたまま火を放たれて殺された。残忍な行為を決して許すことはできない。国際社会は「イスラム国」壊滅に全力を挙げるべきだ。
ヨルダン人人質を焼殺
イスラム教では「最後の審判」の日に肉体が必要とされるために土葬が基本なので、灰にされることは最大の侮辱に当たる。米軍主導の有志連合の一員として空爆に参加しているヨルダンなどの国民に「イスラム国」に危害を加えることに対する報復の恐ろしさを思い知らせるのが狙いだろう。
それにしても人質を焼殺し、その映像を公開するというのは残忍過ぎる。しかも、ヨルダン政府は中尉が既に1月3日の時点で殺害されていたことを確認している。
「イスラム国」は同月29日の後藤健二さんとみられる音声メッセージの中で、中尉が生存しているかのような発言をさせ、ヨルダンで収監中のサジダ・リシャウィ死刑囚の釈放を要求した。実に狡猾(こうかつ)で非情だ。
中尉の一家はヨルダン社会でも影響力を持った有力部族だという。ヨルダン政府は報復としてリシャウィ死刑囚を含む2人を処刑した。ヨルダンや周辺国では「イスラム国」に対する強硬論が噴出している。
これ以上、中東が不安定化するのを防ぐためにも、国際社会は結束して「イスラム国」に対する包囲網を強化しなければならない。
一方、今回の動画公開は「イスラム国」が追い詰められていることを裏付けるものとみることもできる。「イスラム国」は石油密売などで潤沢な資金を得てきたが、米軍はシリアなどで石油関連施設に空爆を加え続けて大きな打撃を与えた。空爆で大量の車両も失われ、「イスラム国」の機動力は落ちているとの指摘もある。指導部が求心力を保つために、あえて手の込んだ残虐な方法で中尉を殺害したとも言えよう。
オバマ米大統領は米国を訪れたアブドラ・ヨルダン国王と会談。これに先立ち、中尉殺害の映像について「『イスラム国』と、その憎むべきイデオロギーが歴史のかなたに消え去るのを見届ける決意だ」と語った。また、キャメロン英首相は「人命を一顧だにしない悪の権化」と非難した。残虐な犯罪集団として「イスラム国」を糾弾する声が世界中に広がっているのだ。
安倍晋三首相も「パイロットが無残にも焼き殺されたことは言語道断で、大きな憤りを覚える」と語った。日本は人道支援などを強化し、地域の安定化を図る必要がある。それが「イスラム国」を追い詰めることにもつながるはずだ。
テロ撲滅へ連携深めよ
テロリストはいったん譲歩すれば次々と要求をエスカレートさせる。「イスラム国」などのテロ組織に対して第一に必要なのは、絶対に屈せず、その壊滅を図るという固い決意の表明であり、第二に国際連帯強化である。日本もテロ撲滅に向け国際社会との連携を深めるべきだ。
(2月6日付社説)