防災組織で「共助」促進を


 最大震度が6弱だった先月の長野北部地震では重軽傷者が40人を超えたが、幸いにも1人の死者も出さず、「白馬の奇跡」と呼ばれた。地域住民が互いに助け合い、最小限の被害にとどめたからだ。このことは減災・防災に「共助」がいかに重要かを示している。

 長野地震で迅速な救出

 長野北部地震では地域住民が迅速に安否確認を行い、重機やチェーンソーなどを使って倒壊家屋の下敷きになった人たちを助け出した。農村地域では農機具が身近にあり、日頃から使い慣れているので救出活動もスムーズに行われた。そうした地域の特性が「白馬の奇跡」をもたらした。共助の典型だ。

 大都市でも共助は欠かせない。そのことを浮き彫りにしたのは、平成7年の阪神淡路大震災だ。犠牲者の8割が家屋倒壊による圧死だったが、日頃から町内会活動が活発だったり、地域コミュニティーが盛んだったりした地域では生存率が高かった。誰が下敷きになったかが容易に分かり、近隣の人たちが救い出したからだ。救助隊による救出は2%以下だった。

 だが、都会には重機もチェーンソーも身近にない。使った経験のある人もほとんどいない。それで日頃から救出や防火のための機具を整備する自主防災組織を結成していれば、もっと多くの隣人を救えた。そんな後悔の声が聞かれた。

 当時、全国での自主防災組織の組織率は4割強にすぎなかった。神戸市では長年続いた革新市政下で、ほとんど結成されていなかった。一部イデオロギー政党が戦時下の防空組織の復活だとして反対したからだ。

 だが、阪神淡路大震災を通じて自主防災組織の重要性が理解されるようになった。国や自治体も力を入れ、全国の組織率は約78%にまで高まっている(平成25年4月)。

 それでも、まだ手付かずの地域がある。高齢化などでほとんど機能していない組織もある。とりわけ近隣の関わりが薄い大都市では実質的な組織作りをどう進めるか、課題を残している。

 東京都のインターネット調査では地域の自主防災組織に参加している人は約8%にすぎない(平成24年)。参加率は低下傾向にあり、組織率が高くても形骸化が顕著だという。このため3年前から防災専門家らを派遣し、モデルとなる自主防災組織を「東京防災隣組」として認定している。これまで約6600組織のうち、約150を認定したが、端緒を開いたばかりだ。

 国民保護法との連携にも課題を残している。海外では防災と防衛は一体で、スイスでは核・化学兵器攻撃を想定した「核・化学班」を設け、訓練も行っている。だが、わが国ではこの種の取り組みは皆無に等しい。

 自主防災組織でこうした対応をしておけば、原発や化学工場の事故はもちろん、テロや有事にも役立つはずだ。それにもかかわらずイデオロギー政党は戦前への回帰だとする時代錯誤な反対論に終始している。

 複合的視点で取り組みを

 長野北部地震の「共助」の教訓を生かし、複合的な視点で地域の自主防災組織の活性化を図っていくべきだ。

(12月12日付社説)