秘密保護法が施行、防諜機関の創設が不可欠


 特定秘密保護法が施行された。情報公開法はあるが、国家の安全に重大な関わりのある秘密を保護する法がないという状況はこれで解消された。

 しかし、同法は諸外国の秘密保護法制と比較すると、不十分な点が少なくない。これらの点は今後の運用によって改めていくべきである。

 適用しなければ形骸化

 特定秘密保護法は防衛、外交、スパイ活動防止、テロ防止の4分野で、安全保障に関わる「特定秘密」を漏らした公務員や民間人に最高10年の懲役を科すものだ。

 昨年12月に発足した国家安全保障会議(日本版NSC)の実効性を高めるため、米国など外国政府との情報共有を進める狙いがある。今年10月に特定秘密の指定や解除のルール、監視体制を具体的に定める運用基準が決定された。

 同法については、特定のイデオロギー集団からの反対論が執拗に繰り返されている。言論の自由を抑圧するというのが表向きの反対理由とされている。

 議会制民主主義国家の場合、秘密保護法(刑法上の秘密保護規定を含む)があり、第2次世界大戦後、情報公開法が制定されている。この両法は決して矛盾することなく、言論の自由も侵害されていない。

 ただ、共産主義国家など独裁国家では、秘密保護法が悪用され自由が侵されている。しかし、これは中国などに典型的にみられるように、問題は秘密保護法ではなく独裁国家体制そのものに潜んでいるのだ。

 企業が莫大(ばくだい)な費用と人材を投入した技術情報が盗まれると、場合によってはその存立に関わるようなダメージを受けることがある。国家も同様なことが言える。だからこそ、議会制民主主義国家でも、スパイには死刑を含む重い刑を科しているのである。

 「法は破られることによってではなく、適用されないことで形骸化する」と言われる。その典型は「破壊活動防止法」である。東京の地下鉄に致死性のガスをばら撒いたオウム真理教に適用しなかったことによって、同法は完全に形骸化してしまっている。

 特定秘密保護法も国家の存立を危うくするような情報を盗み出すスパイを摘発し罰することができなければ、名存実亡となりかねない。

 これを防ぐには、英国のMI5のようなスパイを摘発する専門の防諜機関の創設が不可欠である。スパイの摘発は警察や公安調査庁が片手間に行えるものではない。

 「多くの情報が秘密指定されかねない」との非難もある。情報管理の専門家が強調する秘密漏洩防止策は、第一に秘密指定の数を極力減らすことである。秘密文書が多くなり過ぎれば、漏洩も増えるからだ。文書の増大を防ぐこともできる。

 アクセス権を限定せよ

 第二に、秘密情報へのアクセス権を地位に関係なく必要な者に限定することも欠かせない。自己の管掌外の情報はその重要性の判断が難しいので、扱いが乱雑になるからである。そしてスパイにどのように対応するのか、今後の課題である。

(12月10日付社説)