問われる中国の海洋進出への対応


 中国の国際ルールを無視した海洋進出によって、地域の緊張が高まっている。衆院選では、こうした動きへの対応も問われよう。

 首脳会談後も続く挑発

 日本政府が2012年9月に沖縄県・尖閣諸島を国有化して以降、中国公船が同諸島周辺で領海侵犯を繰り返している。先月には安倍晋三首相と中国の習近平国家主席の会談が実現したが、その後も領海侵犯は行われている。今年は先月末の時点で29回に達した。小笠原諸島の近海などでは中国漁船のサンゴ密漁が問題となっている。

 また中国は昨年11月、尖閣を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定し、中国機による自衛隊機への異常接近が続発。今月に入ってからは、中国機が2日連続で沖縄本島と宮古島間の公海上空を飛行し、自衛隊機が緊急発進(スクランブル)する事態も生じている。

 こうした行動は日本に対する挑発行為として看過すべきことではなく、それは日本政府、国民の反応を試すためのものとみて間違いない。

 この種の動きは、南シナ海でもすでに常態化しており、域内の国々との領有権をめぐる争いが頻発している。南沙(スプラトリー)諸島で、中国は複数の浅瀬の埋め立てを加速化させている。英国の軍事専門の研究機関は先月、長さ3㌔の人工島に滑走路や港湾施設の整備を進めているという分析結果を明らかにした。中国としては南沙諸島で初めてとなる滑走路の建設である。

 米議会の独立機関「米中経済安全保障調査委員会」は先月、アジア太平洋地域のパワーバランスが中国に傾きつつあることを指摘した。中国が挑発的な行為をとる傾向が強まり、それが尖閣や南シナ海の島々をめぐって、日本、東南アジアとの対立を深めると指摘している。

 中国は東シナ海、南シナ海の内海化を図っている。日本としては関係各国との協力の下、これを阻止しなければならない。

 安倍首相は、地域や国際社会の安定に積極的に寄与する「積極的平和主義」を掲げている。また「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を唱え、第2次政権発足後に50カ国を訪問。特に対中包囲網を意識して、東南アジア諸国連合(ASEAN)やオーストラリアとの連携強化に努めてきた。

 日米関係では、4月に来日したオバマ米大統領が尖閣について「日米安保条約第5条の適用対象となる」と初めて明言。7月の集団的自衛権行使容認を反映させる日米防衛協力の指針(ガイドライン)の再改定作業も進めており、尖閣問題などを背景に同盟強化に努めている。

 一方、先月の東アジアサミットでは、日米などが中国による南シナ海での埋め立てを念頭に「一方的行動を自制」するよう呼び掛けた。

 日本はフィリピンやベトナムと海洋警備での協力を強化しており、10月には日米比の合同軍事演習が行われた。

 外交をもっと論じよ

 衆院選では、こうした安倍政権の外交姿勢をどう評価するかも、判断材料の一つとなろう。各党は対中政策を中心に、外交についてもっと論じるべきだ。

(12月9日付社説)