再犯者率最悪、「家族の絆」を取り戻そう


 昨年1年間の刑法犯は11年連続で減少し、32年ぶりに200万件を下回った。その一方で再犯者率は46・7%で過去最悪を更新した。先に公表された2014年版犯罪白書はそんなデータを示した。わが国の治安を良くするには再犯を防ぐ手だてが欠かせない。

孤独な高齢者増加が背景

 わが国の治安神話が崩れ、犯罪が急増したのは2000年代初めのことだ。そうした犯罪情勢を受け、政府は03年に全閣僚が参加する犯罪対策閣僚会議を設け、それ以来、国民にも協力を求め「世界一安全な国、日本」の復活を目指してきた。刑法犯が大幅に減少したのは、官民挙げての治安回復への取り組みの成果だ。

 だが、犯罪の生じにくい社会環境の整備に課題を残してきた。とりわけ家族の絆と地域の連帯を取り戻し、犯罪や少年非行を抑止する機能をどう再生するかが問われ続けてきた。この対策が効果的に取り組まれていない。再犯者率の上昇はそこに原因があると見てよい。

 今回、白書は「窃盗事犯者と再犯」を特集し、その中で万引き(窃盗)の再犯率を年代別に分析、最も高かったのは65歳以上の女性だとしている。その背景として白書が注目するのは、近親者の病気や死去、家族との疎遠などの問題だ。収入減といった経済問題よりも「家族の絆」の喪失が再犯率を高めているからだ。

 これまで再犯防止策として「雇用」など経済面が強調されてきたきらいがある。09年白書では、窃盗罪で2回以上の受刑者のうち、犯行当時、無職だったのが7割以上を占めたことから「安定した生活が改善更生の前提」とした。もとより経済面での安定実現は再犯を防ぐ方策として有効だ。

 だが、高齢犯罪者が増加し、就労確保を通じた従来の再犯防止策だけでは立ち直りの支援が難しくなってきた。高齢者の独り暮らしが増加し、孤独感から心を病み、万引きを繰り返すといったケースも少なくない。高齢になるほど、刑務所に早期に再入所する傾向が高くなっているという。

 また、満期出所者の方が刑期を終える前に仮釈放された人よりも再犯率が高かった。仮釈放の場合、刑期の残り期間で保護司の生活指導や住まいの提供などの支援を受けられるが、満期出所者はそのまま社会に出るからだとみられる。そこで白書は社会との接点を持ちやすくする支援を模索している。

 その際、忘れてはならないのは家族再生策だろう。これまでも家族が再犯率を下げる決め手とされてきた。09年版白書は家族が同居していた場合、再犯率が半減するとし、11年版白書は少年院に家族が面会に来た回数が2回以上では再犯率が下がったとしている。こうした指摘を想起しておきたい。

治安神話復活に不可欠

 少子高齢社会が到来し、独り暮らし世帯が増加するなど家庭環境が変化したが、犯罪情勢にもそれが反映している。社会の連帯も含めて「家族の絆」を取り戻すのは、崩れる社会基盤の再構築だけでなく、治安神話の復活にも欠かせない。

(11月25日付社説)