香港強制執行、中国は民主化要求に耳傾けよ


 香港当局は九竜地区の繁華街・旺角(モンコック)で高等法院(高裁)による道路占拠禁止命令の強制執行を行った。

 行政長官の選挙制度民主化を求める民主派デモ隊が妨害したため、警察はデモ参加者80人を逮捕した。

 「真の普通選挙」求める

 混乱の主因は、中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会が8月、香港の行政長官選挙に民主派の立候補を事実上認めない「普通選挙」の導入を決めたことにある。民主派が反発して「真の普通選挙」を求めるのは当然だ。

 民主派は9月末から香港中心部の幹線道路を占拠してきた。しかし、占拠の長期化で観光業者や商店は大きな経済的打撃を受け、市民からの批判や反発が強まっていた。

 デモ隊の内部対立も激化している。デモ参加者の一部が立法会(議会)議事堂ロビーのガラスを割って侵入を図った事件の逮捕者には、強硬派の主要勢力である急進民主派団体「熱血公民」の関係者が含まれている。この事件はデモの非暴力方針に反するものであり、民主派を困惑させた。

 民主派の現在のやり方に限界があるのは確かだろう。民主派の中からはデモを縮小し、香港政府との対話を求める声も上がっている。一方、現状維持で徹底抗戦を主張する強硬派の影響力も強い。内部対立を早期に収拾し、新たな方針を打ち出すことが求められよう。

 ただ民主派の動向がどうであれ、中国が非民主的な選挙制度を香港に押し付けようとすることは許されない。

 今月に行われた米中首脳会談後の記者会見で、オバマ米大統領が改革を求める香港の学生らを支持する姿勢を表明したのに対し、中国の習近平国家主席は「完全な中国の内政問題であり、外国はいかなるやり方でも干渉してはならない」と真っ向から反論した。

 香港民主派系の学生団体、大学生連合会(学連)の周永康事務局長ら3人の代表は、民主化要求を中国当局者に直接伝えるため、北京入りを目指したが、香港空港で北京行き便への搭乗を拒否された。これでは国際社会で「中国異質論」が広まるばかりだろう。

 台湾では香港の混乱を受け、中国への警戒感が増している。今月末に投開票される統一地方選では、対中融和政策を進めてきた与党・国民党が苦戦を強いられている。

 香港の憲法に当たる香港基本法は「一国二制度」の下での「高度な自治」を保障している。これが損なわれつつあるのを見れば、台湾で中国への反発が強まるのは当然だ。

 中国は香港の民主化要求に耳を傾ける必要がある。たとえ力で押さえつけたとしても、不満はくすぶり続けるだろう。国際的な金融、物流センターである香港の民主主義が後退すれば、結局は中国の利益を損なうことにもなる。

 情勢安定は日本にも重要

 香港の民主的な繁栄と安定は、日本を含むアジア太平洋諸国にとっても重要だ。日本は引き続き情勢を注視していく必要がある。

(11月26日付社説)