国内景気低迷、消費再増税延期は当然だが
国内景気の低迷が改めて確認された。内閣府が発表した7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、前期比実質0・4%減、年率では1・6%減で2期連続のマイナス成長となった。
安倍晋三首相は来年10月に予定されていた10%への消費税率再引き上げを延期し、国民に信を問うため衆院を解散すると表明した。延期は当然だ。これは消費増税関連法の「景気条項」で認められている。ただ、山積する課題に取り組むべき時に解散することには疑問が残る。
予想下回るマイナス成長
民間エコノミスト42人が予想した7~9月期GDP(11月調査、実質年率)は平均2・47%だったが、今回の速報値はそれを大きく下回った。4月の消費増税の影響が予想以上に深刻だったということである。
政府は消費増税による経済への悪影響―景気の腰折れ―に備え、5・5兆円の経済対策を柱とする2013年度補正予算を組み、消費増税に踏み切った。
増税に伴う駆け込み需要の反動減に対して、政府は当初予想通りとして楽観視していた。しかし、3カ月以上過ぎても内需は回復せず、国民の景況感を伝える街角景気は悪化を続け、基調判断の相次ぐ引き下げを余儀なくされた。
予想に甘さがあったのは、前回の消費増税を実施した1997年度の経験が生かされなかったということである。
97年度の消費増税を含む財政緊縮策は、その後の深刻な景気低迷とデフレの長期化、税収の落ち込みによる国債発行の著しい増加を招いた。財政健全化のための増税、緊縮策がその意図とは逆に全体の税収を減らし「元も子もない」事態へと陥らせてしまったのである。当時首相だった橋本龍太郎氏は後に、その失政を認め謝罪した。
なぜ安倍政権の「アベノミクス」は順調にいかなくなったか。デフレ脱却の途上であるにもかかわらず消費増税を実施し、その勢いを削いでしまったからである。増税が早過ぎたのだ。
デフレ脱却と財政健全化が二大経済課題の安倍政権。そのため、消費増税の決断はやむを得なかったとの見方もあるが、この二つの課題への取り組みは決して相反しない。首相が当初強調したデフレ脱却にまず全身全霊で取り組み、デフレ脱却を果たし経済の好循環を実現した―税収も当然増加する―後に、必要に応じ増税を実施する。優先順位の問題なのである。
米財務省為替報告書も財政再建のペースを調整し、内需拡大持続のため個人消費や住宅投資などを刺激する対策を日本政府に求めている。消費再増税を急ぐなということである。
消費増税関連法は付則に「景気条項」があり、時の経済状況を総合的に勘案して政策を変更することは認められている。消費再増税の延期は必ずしも国民の信認を要する政策転換ではなく、衆院解散の大義と直接関係はない。
衆院解散の悪影響を懸念
消費増税で削がれたデフレ脱却への勢いを回復するためにも、消費刺激策、中小企業対策などは喫緊の課題である。解散で生じる政治的空白で経済に悪影響の及ぶことが懸念される。
(11月19日付社説)