日米豪首脳会談、防衛協力体制を明示せよ
日本と米国、オーストラリア3カ国は、あすから豪州のブリスベーンで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合に合わせ、3カ国首脳会談を行う。
安全保障や経済分野での連携、エボラ出血熱や過激組織「イスラム国」への対応などが議題となるが、核心は東・南シナ海で蛮行を続ける中国を念頭にアジア太平洋地域の外交戦略の共有を図ることだ。
日本国内で共同訓練
日米豪首脳会談は2007年9月以来、7年ぶり2回目。会談では第一に、国際法に従って問題を解決することの重要性、力による現状変更は認めないことをアピールすべきである。第二に、日米豪の防衛協力体制を明示することが必要だ。
日中関係は沖縄県・尖閣諸島や歴史認識などの問題で冷え切っていたが、安倍晋三首相と中国の習近平国家主席との会談が実現した。両国政府は会談に先立って「双方は、尖閣諸島など東シナ海海域で近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有している」と明記した合意文書を公表した。
首脳会談で日中は関係改善に向けた第一歩を踏み出したかに見えた。だが、合意文書に関して岸田文雄外相が尖閣をめぐる領土問題は存在しないとの立場を述べたことに対して、在日本中国大使館は「重大な関心と不満を表明する」と反発する談話を発表。中国の不当な主張は変わっていない。
一方、オバマ大統領も習主席と会談を行ったが、温室効果ガスの抑制で合意したものの、人権や香港情勢をめぐって応酬するなど意見の違いも浮き彫りになった。民主主義などの基本的な価値観を共有する日米豪の連携を強化すれば中国を牽制(けんせい)することができよう。
安倍首相は米国はもちろん、豪州との関係も重視している。日豪はともに米国の同盟国であり、7月の豪州訪問の際は「特別な関係」を宣言して「蜜月」をアピールした。
今月に入って、日本国内では初めてとなる日米豪共同の大規模訓練が行われた。宮城県沖でマグニチュード9・0の地震が発生し、大津波が襲うと想定した陸上自衛隊東北方面隊による「みちのくアラート2014」であり、米軍の新型輸送機オスプレイも参加した。
もう一つ、離島防衛を目的とした「キーン・ソード(鋭い剣)」も始まった。鹿児島県・奄美大島沖の離島での水陸両用作戦演習のほか、海自護衛艦が米空母を護衛する訓練が行われている。豪軍の参加は、もちろん中国をにらんでのものだ。
日米豪首脳会談では、オバマ大統領が米国のアジア太平洋地域へのリバランス(再均衡)の確認、安倍首相は集団的自衛権の行使容認の意義、アボット首相は米海兵隊の豪州ローテーション展開の拡大を強調することになろう。オバマ政権には、日米豪あるいは日米印などの枠組みを発展させ、アジア太平洋域内の同盟ネットワーク化を図る狙いもある。
対中抑止力の向上を
アジア太平洋地域の平和と安定のため、日米豪が関係を強化して中国への抑止力を高めることが求められる。
(11月14日付社説)