「積極的平和主義」を前面に


 アジア太平洋地域では今月中旬、三つの国際会議が連続して開催される。国際会議は自国の政策、進むべき方向性を世界に向け明確に発信するパブリック・ディプロマシー(広報外交)の舞台という側面があることも特徴である。自国の宣伝の場と言っても過言ではない。

日中会談開催が固まる

 10~11日に中国・北京でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議、13日にミャンマー・ネピドーで東アジアサミット(EAS)、15~16日にはオーストラリア・ブリスベーンで主要20カ国・地域(G20)首脳会議が開催される。

 三つの国際会議には世界の主要国がほとんど参加し、20カ国前後の首脳が外交を展開する。安倍晋三首相にとっては、かねての「地球儀外交」推進の場である。国家安全保障戦略の基本理念である「国際協調主義に基づく積極的平和主義」を訴える機会でもある。

 安倍政権は積極的平和主義に基づき、集団的自衛権の行使を容認した。また、武器や関連技術の海外移転を原則禁じてきた武器輸出三原則に代わり、条件を満たせば認める防衛装備移転三原則を決定。災害救助など非軍事目的であれば外国軍が関与する活動への政府開発援助(ODA)による支援を年内に認めることも目指している。

 安倍首相はこうした政策への各国の理解を得られるよう努めるとともに、日本がどのように地域の安定に貢献しようとしているのかをアピールすることに力を注ぐべきだ。

 一方、各国首脳との個別の会談も重要だ。APEC首脳会議に合わせ、安倍首相と中国の習近平国家主席による首脳会談の開催が固まった。日中首脳会談は第2次安倍政権では初めてとなる。

 中国は軍事力を背景に強引な海洋進出を行っている。中国公船による沖縄県・尖閣諸島周辺の領海侵犯は常態化し、昨年11月には尖閣を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定するなど日本との摩擦を強めている。安倍首相は尖閣が日本固有の領土であることを改めて表明するとともに、東・南シナ海での力による現状変更の試みをやめ、国際法に従って問題を処理するよう習主席に求めるべきだ。

 ロシアのプーチン大統領との会談でも、北方領土交渉進展への取り組みはもちろん必要だが、ウクライナ南部クリミア半島の併合を撤廃し、ウクライナ東部の停戦合意履行に影響力を行使するよう強く促さなければならない。

 G20の場での日米豪首脳会談も調整中である。会談では米国のアジア太平洋地域へのリバランス(再均衡)や日本の集団的自衛権の行使容認などの意義を表明する見通しだ。

 日本にとって米国は同盟国であり、豪州も「準同盟国」と言える存在だ。人権や民主主義などの基本的な価値観を共有する3カ国の連携を謳(うた)うことは中国への牽制に繋(つな)がる。

世界平和実現に貢献を

 日本は今や世界の中でも大きな信頼を獲得している大国の一つであり、世界平和と安定の実現のために、積極的に貢献することが期待されている。

(11月8日付社説)