実効性ある温暖化対策の国際枠組み構築を


 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、地球温暖化に関する最新の科学的知見をまとめた第5次統合報告書を公表した。

 温室効果ガスの排出が続けば人類や生態系に後戻りができない影響が及ぶ可能性があると警鐘を鳴らした上で、各国に温暖化対策の強化を迫るものだ。

 IPCCが報告書公表

 統合報告書の公表は2007年以来7年ぶりで、昨年9月~今年4月にかけて三つの作業部会が取りまとめた内容の主要部分を盛り込んだ。12月にペルーで開かれる国連気候変動枠組み条約第20回締約国会議(COP20)で報告され、温暖化対策をめぐる国際交渉の科学的根拠となる。

 国際社会は18世紀半ばの産業革命前と比べた平均気温の上昇を2度未満に抑える目標を掲げている。2度以上になると、異常気象や生態系への悪影響のリスクが高まるとされる。

 報告書は19世紀後半以降の世界全体の二酸化炭素(CO2)の累積排出量と平均気温の上昇がほぼ比例し、この傾向は今後も続くと予測した。目標達成に必要な排出量の上限は2兆9000億㌧としたが、このうち1兆9000億㌧はすでに排出されている。

 残り1兆㌧は現在の排出量の30年分にすぎない。このため、温室ガス排出量を50年までに10年比40~70%削減し、今世紀末にはゼロか大気中から回収してマイナスにすることが必要と訴えた。

 また、30年までに十分な対策が行われないと、その後の対策費は約1・4倍に増えるとも指摘。一方、都市を冷やす緑化や災害に強い作物作りなどによるリスク軽減など温暖化への適応策も重視した。

 世界各国は来年末にパリで開かれるCOP21で、京都議定書に代わる20年以降の温室ガス削減の国際枠組みを決める。今後本格化する交渉では、実効性ある枠組みの構築が求められる。

 これに先立ち、各国は20年以降の温室ガス排出削減の目標案を提出する。準備できた国は来年3月までに出すことが求められており、欧州連合(EU)が30年までに1990年比で40%削減する方針を決めたほか、米国や中国も来年3月までの目標案提出を表明した。

 日本も先月、政府内の検討をスタートさせた。しかし、今後の原子力発電量が見通せないため、目標案提出の時期さえ示せていない。昨年11月にポーランドで開かれたCOP19で、日本は20年までの削減目標を「05年比3・8%減」と発表。1990年比では3%程度増えるため、国際社会の批判を浴びた。このままでは、今後の交渉で後手に回ることになりかねない。

 原発への理解得る努力を

 報告書は平均気温上昇を2度未満に抑えるための有効な方策として、再生可能エネルギーや原子力、CO2の回収・貯留(CCS)技術の普及などを列挙している。

 安倍政権は温暖化対策の観点からも、安全が確認された原発の再稼働に向けて国民の理解を得られるよう努めるとともに、日本の優れた環境技術を途上国に提供して貢献すべきだ。

(11月7日付社説)