福島新知事、将来像明示し復興加速を


 東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第1原発事故後初となった福島県知事選は、無所属新人で前副知事の内堀雅雄氏が初当選した。

内堀前副知事が当選

 3選出馬を見送った佐藤雄平現知事は、内堀氏を後継指名した。内堀氏は自民、公明、民主、社民各党から支援を受け、手堅い組織戦を展開。副知事として震災からの復興に取り組んできた経緯も訴え、元岩手県宮古市長の熊坂義裕氏ら新人5人を抑えて圧勝した。

 当選後、内堀氏は「福島の復興、再生を何としても果たさなければならない」と使命感をにじませた。大震災から3年7カ月が経過したが、いまだに約12万人の県民が県内外で避難生活を送っている。

 仮設住宅などで体調を崩して死亡した「震災関連死」の数は、地震や津波による直接死を上回っている。避難の長期化で先が見えないことへのストレスや、生活環境の激変で持病が悪化するケースも多い。

 完成した災害公営住宅(復興住宅)は計画数の約1割にすぎない。各世論調査では、県民の多くが復興の進み具合に不満を感じている。

 今回の知事選では、6人の候補者が全員、県内原発10基を廃炉にする考えを示した。また、7月の滋賀県知事選に続く黒星を回避したい自民が、民主などが推していた内堀氏に事実上相乗りしたため、政策論争が深まらなかった面のあることは否めない。

 内堀氏には福島の将来像を明示し、復興を加速させることが求められよう。

 福島では現在のところ、原発20㌔圏内で避難指示が解除されたのは、田村市都路地区と川内村東部の2カ所だ。だが、生活環境が復旧しておらず働く場もないため住民の帰還は進んでいない。避難地域の再興には、道路、病院などの整備や企業誘致などが欠かせない。

 避難する県民の中には、帰還を目指す人もいれば、新たな定住先を望む人もいる。それぞれのニーズを理解し、きめ細かく対応すべきだ。

 復興の加速には、除染で出た大量の汚染土の処理も必要だ。佐藤知事は9月、汚染土の中間貯蔵施設を同県大熊、双葉両町に建設することを容認する考えを国に伝えた。

 だが、候補地の買収金額は地権者の希望と大きな差があり、今後の個別交渉は難航が予想されている。各地に仮置きされている汚染土の輸送ルートも決まっていない。県の調整能力が問われる。

 農家の風評被害も依然として深刻だ。県はコメの全袋検査を実施し、安全が確認されたコメだけを出荷しているが、消費者の買い控えは続いている。選挙戦でトップセールスによる風評被害払拭(ふっしょく)を掲げた内堀氏は、公約実現に全力を挙げなければならない。

国も取り組み強化を

 安倍晋三首相は内堀氏当選を受けて「一緒に力と心を合わせて復興に全力を尽くしていきたい」と述べた。

 国は内堀氏と協力して福島の復興加速への取り組みを一層強化すべきだ。

(10月28日付社説)