民主新執行部、責任ある政策を明示せよ
民主党が新たな執行部を発足させた。海江田万里代表は、代表代行に岡田克也前副総理、幹事長に枝野幸男元官房長官らを起用し「挙党態勢」をアピールしている。だが、どのような政策を掲げて国民の信頼を勝ち取るのか、その道筋はまだ見えてこない。
相変わらずの曖昧さ
新執行部は海江田代表と距離を置いてきた岡田氏らを取り込み、挙党態勢の体裁は整えた。では、党を挙げて何に取り組むのか。政策は相変わらず曖昧なままだ。海江田代表は自民党との対峙を強調するが、これでは旧社会党のような反対だけの無責任野党になりかねない。ここが新執行部の最大の課題と言ってよい。
先に公表された福島第1原発事故をめぐる「吉田調書」は、当時の菅直人首相と民主党政権がいかに現場の事故対応を混乱させたかを浮き彫りにした。稚拙な政治家と政党。国民はその印象を一層、強めたはずだ。その克服は並大抵ではない。人事だけの挙党態勢ではとうてい信頼は回復できまい。
言うまでもなく、政治の機能は国民の意思を集約し、社会の統合を図るところにある。民主国家でそれを担うのは政党にほかならない。英国の政治思想家エドマンド・バークは、政党は理念・政策を一致させ「国民的利益」を図る結社であり、徒党であってはならないと指摘している。
こうした政党たりえるのか、このことを民主党は常に問われてきた。党内には左右のイデオロギー対立が残り、また労組系議員も少なからずおり、政策で一致できず、しばしば「曖昧政策」でお茶を濁してきた。
その悪弊を引きずって政権に就いたことで、さまざまな混乱をもたらした。国の生存の基礎となる外交・安全保障政策を曖昧にし、在沖縄米軍の普天間飛行場の移設問題で「最低でも県外」と主張し、日米同盟を揺るがして東アジアの安保環境を不安定化させた。
国内政治では、子ども手当や農家の戸別所得補償といったバラマキ施策に終始し、東日本大震災では「吉田調書」で明らかなように原発事故への対応を誤り、その後の復興事業も停滞させた。こうした稚拙な政権運営を国民は拒絶し、再び野党に転落した。
それから2年近く経つが、民主党がそうした反省を踏まえて党再生を果たしたとは言い難い。このことを想起すれば、新執行部は何をなすべきか、おのずと答えが出るはずだ。
何より重要なのは、国民に確固たる政策を明示することだ。6月に改正国民投票法が成立し、今後は憲法改正論議が本格化するが、民主党はここでも曖昧さを残したままだ。いつまでもイデオロギー的な護憲主義に引きずられていては時代に取り残されよう。
反対だけでなく代案を
安保政策に関しては、集団的自衛権や新たな日米防衛協力のための指針(ガイドライン)でも安倍内閣への対決色を強めるだけで、明確な代案を示していない。
新執行部には責任ある政策を明示してもらいたい。
(9月22日付社説)