温暖化対策に本腰入れよう


 この夏の記録的豪雨や竜巻の頻発、世界各地で起きる熱波や旱魃など異常気象は、地球温暖化が原因とみられ、今後、温暖化に歯止めが掛からなければ、こうした気候変動は一層激しくなる――。

日本の取り組みが後退

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、先月6年ぶりで発表した報告書でこう警告した。世界195カ国の科学者らによって構成されるIPCCの報告は、2020年以降の温暖化防止に向けた新たな国際的枠組みづくりの議論に反映されるものとみられる。

 報告書は21世紀末の世界平均気温が約100年前と比べて最大4・8度上昇し、海面水位は最大82センチ高くなると予測している。また、1880年から2012年までの間に平均気温が0・85度上昇し、海面水位は1901年から2010年までに19センチ上昇したと分析した。

 さらに、こうした気温上昇が人間活動に起因する可能性が「極めて高い」(95%)と、前回の「非常に高い」(90%)より踏み込こんだ表現で、ほぼ断定している。

 今回の報告では、海水温について、浅い場所だけでなく、水深3000メートルより深い所でも上昇している可能性が高いとしている。これが海洋環境に及ぼす影響も懸念される。

 温暖化に歯止めが掛からず、対策が待ったなしの状況にきていることは、この夏の猛暑や相次ぐ異常気象で、われわれにも実感できる。しかし、世界そして日本における対策は足踏みしている。

 1997年の「京都議定書」採択や2008年の北海道洞爺湖サミットで、温暖化防止に向けて指導的な役割を果たそうとした日本だが、11年の東日本大震災と福島第1原発事故で、その取り組みは大きく後退した。とりわけ原発によって二酸化炭素(CO2)の排出量を減らそうという計画は、原発の相次ぐ稼働停止と化石燃料の使用量増加によって頓挫した。

 しかし、大震災や原発事故のゆえに温暖化防止への努力を怠ることは許されない。日本政府は、この11月ポーランドで開かれる「国連気候変動枠組み条約第19回締約国会議」(COP19)までに20年までの新たな削減目標を決める予定だが、決められるかどうかも危ぶまれている。

 国際社会における責任を果たし、温暖化問題で指導的役割を果たすため、現実的な目標を決定すべきだ。

 そのために、あらゆる技術、政策を総動員する必要がある。風力、太陽光、地熱など再生可能エネルギーの利用を進め、途上国への技術援助にもっと力を入れるべきだ。化石燃料の利用に関しては、排出されたCO2の回収・貯蔵技術も期待できる。普及を急いでほしい。

原発再稼働が不可欠

 それとともに、やはり最も効果的なのは、原発を再稼働することである。温暖化対策と経済効率という面で、原発は今のところ最も有効であることははっきりしている。

 原子力規制委員会による安全審査をしっかりと遅滞なく行って、できるだけ早く再稼働すべきである。

(10月7日付社説)