観光白書、一層のビザ緩和や魅力発信を


 政府は先日発表した2014年版観光白書で、年間の訪日外国人数2000万人の達成に向けて、20年開催の東京五輪・パラリンピックが「強力な追い風」になるとして、波及効果を高める取り組みに直ちに着手する必要性を強調した。

1000万超えた訪日客

 東京五輪は、日本が世界の注目を浴びるまたとない機会であり、国内的にもさまざまな施策実行の弾みとなる。これを観光立国実現に最大限生かすべきである。

 ただ、五輪特需のようなものに終わらせてはならない。好機を逃さないようにする一方で、長期的で総合的な施策を進めるべきだ。

 13年の外国人旅行者数は、前年の836万人から過去最高の1036万人となり、念願の1000万人を超えた。その要因として白書は、東南アジア諸国を中心としたビザ発給要件の緩和や日本発着の国際線増加などを挙げた。円安や低価格航空会社の新規就航も大きい。

 ビザ要件の緩和をより拡大し、対象国をもっと広げるべきだ。治安上の問題を考慮しながらも、積極的に進めていく必要がある。

 政府観光局の発表によると、4月の訪日外国人数(推計値)は、前年同月比33・4%増123万1500人だった。15カ月連続のプラスで、3月(105万500人)に続き単月の過去最高を更新した。

 桜の花見シーズンでアジア、羽田空港の国際線増便で欧州からの観光客が増えたことが大きいようだ。特に英国やフランス、ドイツは2桁増だった。羽田や成田、そして地方空港の国際線の拡充も重要だ。

 白書では、過去の五輪開催国が開催前の早い段階から観光客誘致の活動を強化していることに学ぶべきだとし、国際会議の誘致、交通網の整備に直ちに取り組むべきだとしている。また、訪日客から要望が高い公衆無線LANの整備や、免税店の拡大、街の景観の改善のための無電柱化も進めるとしている。

 東京五輪のほかにも昨年、富士山が世界文化遺産、和食が無形文化遺産に登録されるなど、観光立国実現への追い風となる資源は増えている。

 特に和食は今や世界的なブームとなっている。これをいかに日本への訪問に繋げるか。ツアー企画やイベントなどを工夫し、知恵を絞る必要があるのではないか。

 日本はまた地方色豊かな国である。景色から歴史・文化、食べ物などの観光資源もそれだけバラエティーに富んでいるということだ。それを知れば、東京や京都、大阪だけでなく地方にも行きたいと思う外国人は増えるはずだ。地方の魅力をもっと発信していきたい。

大胆できめ細かい施策を

 昨年1000万人を超えたとはいえ、日本の外国人旅行者の数は12年の実績で世界33位にとどまっている。それは観光資源に乏しかったからではなく、産業の重点を長くそこに置いてこなかったためだ。

 そういう意味では伸びしろも大きい。観光立国実現への大胆にしてきめの細かい取り組みが求められている。

(6月14日付社説)