児童ポルノ規制強化の歩み止めるな


 児童ポルノの所持を禁じる改正法案が衆議院本会議で可決され、今国会中に成立するのが確実となった。

 需要を断たなければ供給は減らないのは当然のことで、所持禁止の実現は遅きに失した感があるが、成立すれば児童ポルノの撲滅へ一歩前進する。だが、これで十分ではない。子供を性欲の対象として描いた漫画・アニメなどは野放し状態であり、これらの禁止に向け、規制強化の努力を今後も続けてほしい。

単純所持禁止の改正法案

 現行の児童ポルノ禁止法は製造・販売、そして販売目的での所持は禁じているが、趣味で個人が所有することは規制の対象外だ。改正法案は、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持(単純所持)した者に1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科す。ただ、すでに所持している者に廃棄を促すため、施行から1年間は罰則を適用しないという内容。

 たとえ個人的な趣味であろうと、所持を認めれば需要を生み出す。需要を断たなければ、製造・販売は減らない。先進7カ国(G7)の中では、日本を除いたすべての国が単純所持を禁じている。わが国の同法の欠陥については、国際社会から長年批判を受けてきた。今日まで単純所持禁止の実現にめどをつけられず、被害者を増やしてきたことを国会は反省すべきだ。

 警察庁のまとめによると、昨年1年間に同法違反で摘発した事件は1644件で過去最悪だった。被害児童は646人で、こちらも過去最悪。しかも前年より115人も増えた。5年前に比べ、事件は2・4倍、被害児童は1・9倍に上る。現行法ではさらなる被害増大を食い止めるのが難しいのは明らかだ。

 一方、発生から8年半を経て容疑者が逮捕された栃木県今市市(現日光市)の小1女児殺害事件では、容疑者の自宅パソコンに大量の児童ポルノ画像データが保存されていた。幼児性愛(ペドフィリア)の性向を持っていることは間違いない。

 児童ポルノは幼い子供への性的虐待という許し難い犯罪を犯して製作されるのだから、それだけでも凶悪である。その画像や動画によって歪んだ性的欲求を満たすため、さらに重大犯罪に走る者も散見される。所持することも厳しく罰するのが国際的な流れとなる所以である。

 自民、公明、日本維新の会の3党が昨年5月、国会に提出した改正法案は単純所持の禁止に加え、漫画・アニメについて「調査研究し、必要な措置を講じる」と明記していた。これが、表現の自由を侵しかねないとする左派勢力に押し切られる形で削除されたのは残念である。

 6年前8にブラジルで行われた「第3回児童の性的搾取に反対する世界会議」は、子供をわいせつに描いた漫画・アニメも禁止する必要性を盛り込んだリオ行動計画をまとめた。先進国ではすでに漫画・アニメを禁止している国が少なくない。

漫画・アニメ禁止が課題

 漫画でも内容次第ではわいせつ物になるとの最高裁判決もある。表現の自由を侵すとの批判は筋違いだ。漫画・アニメの禁止が大きな課題として残っていることを忘れるべきでない。

(6月8日付社説)