G7サミットでの対中牽制の宣言採択を評価


 ベルギーのブリュッセルで開催された先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)は首脳宣言で、ウクライナの安定化に向けたG7の結束を表明し、ロシアに対し「制裁強化の用意がある」と警告した。

 また、名指しを避けながらも海洋進出を図る中国を念頭に「現状変更のいかなる一方的な試みにも反対する」と牽制した。こうした宣言が採択されたことは、わが国にとって大きな成果だと言える。

中露に共通する覇権主義

 G7はロシアがウクライナ南部クリミアを併合したことに反発。3月下旬の首脳会議で、対抗措置として、ロシアのソチで予定されていたG8サミットをボイコットし、G7サミット開催を決めた。

 ウクライナ情勢に関し、首脳宣言は5月の大統領選で勝利したポロシェンコ氏を次期大統領として結束して支援することを盛り込んだ。これとともに、クリミア併合や東部の親露派へのロシアの関与は「容認できない」と非難。ロシアに混乱を収拾させるため、追加制裁も辞さない構えを示したのは当然だ。

 ロシアは国際ルールに背を向けて力で現状の変更を図ろうしている。これは中国も同様だ。クリミア併合と中国による尖閣奪取の試みは覇権主義的行動という点で共通している。安倍晋三首相はウクライナ情勢について「他の地域の問題にも連動してくる」と指摘し、東アジアにおける中国の海洋進出にG7の注意を向けさせた。

 最近の中国の強硬姿勢には目に余るものがある。東シナ海上空では、ミサイルを搭載した中国軍戦闘機が自衛隊機に異常接近した。南シナ海では、ベトナムと領有権を争う西沙(英語名パラセル)諸島海域で石油掘削作業を始め、現場に派遣されたベトナム船に中国船が体当たりし、ベトナム側に負傷者が出ている。

 ベトナムは中国の海洋進出を牽制するG7の首脳宣言を「歓迎する」と表明した。一方、中国は「(東シナ海や南シナ海の)争いを国際化し、関わりのない国が干渉、介入するのは問題解決を難しくするだけだ」と反発している。

 首相は5月末にシンガポールで開催されたアジア安全保障会議に出席し、東シナ海と南シナ海で「法の支配」を無視するかのように振る舞う中国への包囲網形成の必要性を訴えた。今回の成果は、こうした周到な準備によって得られたものだと言えよう。

 さらに、首脳宣言が日本人拉致を「人道に対する罪」と指摘した国連調査委員会の報告を踏まえ、北朝鮮に対して「速やかな措置」を取るよう要請したことも貴重な成果だった。拉致被害者の再調査で日本と合意した北朝鮮への圧力として重みを持つからだ。

日本は共同行動へ誘導を

 今後の日本外交に必要なのは、対中共同行動を取れるようにG7を誘導していくことだ。フランスは昨年、ヘリコプター着艦装置を中国に提供し、日本が懸念を表明した。

 首脳宣言の実施へ、まずG7自身が結束を固めなければならない。

(6月7日付社説)