温暖化報告書、全人類が危機感の共有を


 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第1作業部会が報告書を発表し、2021~40年の間に世界の平均気温が約100年前に比べて1・5度上昇し、異常気象や海面上昇などが深刻化する可能性が高いと警鐘を鳴らした。全人類が地球温暖化への危機感を共有し、対策を急ぐべきだ。

 近く1・5度上昇も

 報告書は、五つの温室効果ガス排出シナリオを設定し、気温上昇に関する新たな予測を提示した。50年に温室ガス排出を実質ゼロに抑えることができるシナリオでも、21~40年に1・5度の上昇に到達する可能性が高いと強調。近い時期に1・5度に達する恐れを明示した。

 温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、気温上昇を2度未満に抑え、1・5度にとどめるよう努める目標を掲げる。しかし、報告書は20年までに既に約1度上昇したとしている。早急に対策を講じる必要がある。

 注目すべきは、人間活動による温暖化への影響について、13年の前回報告書は「支配的な原因だった可能性が極めて高い」と記載したが、今回は「疑う余地がない」と初めて断定したことだ。「熱波や豪雨などの現象は、人間の影響によるものだという証拠がより強固になっている」として、さらに踏み込んだ表現を盛り込んだ。

 温暖化による異常気象は全世界で増えている。今年6月、カナダ西部や米北西部では気温が50度近くに上昇。7月にはドイツ西部などで記録的豪雨と洪水が起きた。日本も近年、台風や大雨の被害が各地で発生し、18年の西日本豪雨では温暖化によって被害が拡大したとされる。

 報告書では、50年までに実質ゼロを達成すれば、今世紀中ごろから平均気温の上昇幅が下降に転じるシナリオも示された。今年10月末から英グラスゴーで開かれる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)などで、全世界が「50年ゼロ」に向けた取り組みを強化しなければならない。

 特に、温室ガス排出量が世界最大の中国の動向を注視する必要がある。中国は30年までに排出を増加から減少に転じさせ、60年に実質ゼロとする目標を掲げる。ただ、主要先進国が30年までの半減程度と50年ゼロを目指す中、現在の中国の方針のままでは世界全体で排出量の削減が相殺されてしまう。

 今年6月に開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、首脳宣言に50年ゼロや1・5度の目標に関して「G7は特に他の主要な排出国に対し、われわれに加わることを求める」と明記。中国に対策強化を求める形となった。

 中国はこれまで温暖化問題に関し自国を途上国と位置付け、先進国並みの厳しい対策の実施を受け入れてこなかった。しかし、中国の責任は極めて重いことを自覚すべきだ。

 原発の積極的活用を

 日本も50年ゼロを目標に掲げているが、達成には再稼働が停滞している原発の積極的な活用が欠かせない。原発は「重要なベースロード電源」で発電時に温室ガスを排出しない。政府は新増設や建て替えを進める方針も示す必要がある。