拉致問題解決へ国際的圧力を


 国連人権理事会が設置した北朝鮮の人権問題に関する国際調査委員会が、最終報告書を発表した。報告書は日本人ら外国人の拉致など北朝鮮の数々の人権侵害行為について、独裁体制による「人道に対する罪」と断定し、「これほどの人権侵害がまかり通っている国は、現代では類を見ない」と非難した。

 中立的な国際調査委による北朝鮮の人権侵害への批判は画期的である。拉致問題解決に向け、全世界の被害国が連携を密にして北朝鮮に対する圧力を強化すべきである。

 「人道に対する罪」と断定

 北朝鮮は、拉致問題は「解決済み」と主張している。だが、報告書は少なくとも100人余の日本人が拉致されている可能性があるとの判断を示した。

 注目されるのは、拉致被害国は日本、韓国をはじめアジア、中東、欧州に及び、拉致を命令したのは最高権力者だった故金日成主席、故金正日総書記だと明言したことだ。拉致は1950年から繰り返され、80年代までに子供を含め計20万人超が連れ去られたと説明している。

 人権侵害は被害者とその家族に及び、拉致問題の「衝撃と痛みは想像を絶する」と北朝鮮を厳しく非難している。当然のことであり、北朝鮮当局は国際社会の声を重く受け止めるべきである。

 また、北朝鮮国内で多数が餓死したとされる飢餓は、国民統制の目的から起きたものとしている。現在も8万~12万人が政治収容所に強制的に入れられ、拷問や処刑が行われているとも指摘した。

 これは北朝鮮の「組織的で広範に及ぶ甚大な人権侵害」を認定するものとして重みを持ち、国際社会の対北制裁に根拠を与えるものである。

 報告書では、国連をはじめとする国際社会は北朝鮮の罪に対処する「責務がある」と強調している。この文言は非常に重要である。

 1990年代の旧ユーゴスラビア紛争では「民族浄化」の名の下に虐殺の嵐が吹き荒れた。このため、北大西洋条約機構(NATO)は「人道的介入」という新しい概念を打ち出し軍事行動に踏み切った。

 内政不干渉という原則があるとしても、「人道に対する罪」に当たるような人権侵害には介入できるという考えだ。報告書が国連や国際社会の「責務」を強調したのは、「人道的介入」の概念を北朝鮮にも適用できるとの判断を示したと見ることができる。

 それにつけても残念なのは、中国の態度だ。調査委が国連安全保障理事会に対し、北朝鮮の人権侵害を裁くため国際刑事裁判所(ICC)への付託を勧告したことについて「人権状況の改善には役立たない」と反対した。中国は安保理常任理事国であり、拒否権が行使されれば付託はできない。

 かばう中国も「異質」

 人類普遍の価値である人権を侵害する北朝鮮や、北をかばう中国のいずれもが「異質な国」であることが改めて示されたと言える。

 人間の尊厳を認めない限り、両国と日本を含む西側諸国との真の友好はあり得ない。

(2月21日付主節)