記録的大雪、脆弱な地域での対策が必要


 関東甲信から東北地方を襲った記録的大雪は、大きな爪痕を残した。死者の数は20人以上に上り、いまだに孤立状態の集落もある。早く交通・流通の混乱を解消するとともに、降雪に脆弱(ぜいじゃく)な地域での対策を検討する必要がある。

車両撤去へ法改正検討

 政府は非常災害対策本部を設置。安倍晋三首相は「関係地方公共団体と連携を密にし、国民の生命、財産を守るため、対応に万全を期してほしい」と述べ、孤立による凍死者を一人も出さないこと、ライフラインの復旧や道路の通行確保に努めることなどを重点に指示した。

 孤立した集落の多くは山間部にある。今回最大150㌢近くもの雪が積もった山梨県の早川町は、県道37号線が通行止めになり、一時665世帯1183人が孤立。一部では停電も発生した。県道の除雪にほぼ5日間を要した。

こういった山間部の集落は高齢者が多い。ライフラインが途絶えたり食料が不足することは即、生命の危険に繋(つな)がる。

 今回、道路の復旧が遅れた原因の一つに、大雪で立ち往生した車両が除雪作業の妨げになったことがある。これを受けて菅義偉官房長官は、災害緊急時に国や地方自治体の判断で車を強制的に撤去できるようにするため災害対策基本法改正に着手する方針を示した。

 菅長官は「車両所有者の意向との関係、車両を損壊した場合の損失補填(ほてん)の法的根拠が存在していない」と指摘。「首都直下地震でも大きな問題になる可能性があり、早急に検討する必要がある」と述べた。

 人々の生命が危険にさらされる緊急時には、私権の制限もやむを得ない。法改正を急いでほしい。

道路の除雪や孤立した集落への救援物資の輸送では、自衛隊が大きな力を発揮した。今回のような大雪被害を想定して、自衛隊と地方自治体との連携がスムーズにいくよう日頃から連絡態勢を整えておくべきだ。

 深刻な被害をもたらした最大の理由は、通常は雪がそれほど降らない地域に想定を超える降雪があったことである。大雪は日本列島上空の強い寒気と「南岸低気圧」の通過によるものという。春先に関東地方や太平洋側でまとまった雪が降ることは珍しくないが、今回はこれまでの常識を超えた。

 気がかりなのは、このような大雪が、将来もある程度の頻度で関東甲信などで降るかどうかだ。気象庁には、この点の研究をぜひ進めてもらいたい。

 近年、日本は地球温暖化の影響で夏の猛暑や豪雨、そして竜巻などにしばしば見舞われ、自然災害も多く発生している。今回の大雪もこうした傾向と軌を一にするものであるとすれば、もっと抜本的な対策も必要になってくるだろう。

被害小さくする備えを

 気象庁は今回の大雪について「雪が降る量の予測に不十分な点があった」と述べ、予測精度の向上を目指す考えだ。さらに精度が高まれば、より的確な防衛策を取ることができる。われわれも今回の教訓を生かし、被害をできるだけ小さくするための備えをしていきたい。

(2月22日付社説)