エネルギー計画案 原発の新増設を明示せよ


 経済産業省が国のエネルギー政策の方向性を定める「エネルギー基本計画」の改定案を公表した。

再エネを「主力電源化」

 菅義偉首相が2030年度の温室効果ガス排出量を13年度比で46%削減する新たな目標を打ち出したことを踏まえ、30年度の電源構成を見直した。太陽光など再生可能エネルギーの比率を36~38%(現行計画は22~24%)に引き上げる。原発は現行通りの20~22%とし、火力発電は41%(現行計画では56%)まで大幅に引き下げる。

 改定案では、再エネについて「主力電源化を徹底し、最優先で取り組む」と明記。太陽光や風力発電の拡大に取り組むほか、送電線容量の制限で再エネの普及が遅れるのを防ぐため、火力などより優遇して利用できるようルールを見直す。

 しかし、国土面積の狭い日本では太陽光や風力の適地が限られる。自然環境や景観が損なわれるとの懸念から、設置を規制する条例の制定が全国で相次いでいる。こうした現状で再エネの比率を計画通りに高めることができるのか。

 東京電力福島第1原発の事故後、国が決めた価格で電力会社が再エネによる電力を買い取る「固定価格買い取り制度(FIT)」によって電気料金が上昇した。再エネを拡大すれば、送電網の強化や燃料費が安い石炭火力の稼働減などで料金がさらに上がることが懸念される。

 一方、原発は現行計画と同様に「重要なベースロード電源」と位置付けた。ただ計画通りの比率とするには、再稼働済みの10基に加え、申請中の17基を合わせた計27基の原発が稼働しなければならない。政府は再稼働を進める必要がある。

 確かに福島の事故以来、原発に対する国民の不安は根強い。再稼働が進まないのもそのためだ。しかし原発は電力を安定的に供給でき、温室ガスも排出しない。天候によって発電量が左右される再エネを補う上でも、原発の活用は不可欠だ。

 原発の燃料であるウランは、オーストラリアやカナダなど比較的政情の安定した国でも産出するため、調達しやすい。同じ規模の電力を生み出すのに、火力発電と比べて少ない量の燃料で可能だという利点もある。エネルギー資源のほとんどを海外に依存する日本にとって、エネルギー安全保障の観点からも原発の存在は重要だと言えよう。

 その意味で、改定案で原発に関して「可能な限り依存度を低減する」との記載を維持し、新増設や建て替えに言及しなかったことは腰が引けていると言わざるを得ない。原則40年の運転期間を延長すれば、当面は原発を活用できよう。だが新増設や建て替えがなければ、首相が温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするとしている50年には、原発の比率が10%程度まで下がると予測されている。

安全な原子炉の開発を

 米国や中国では、安全性を高めた小型原発の技術開発が進んでいる。日本は改定案で、小型原子炉や高温ガス炉などの開発に注力するとした。こうした技術の確立を目指すのであれば、原発の新増設や建て替えを明示すべきだ。