中朝の核兵器 日本は抑止力を向上させよ
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は、米露英仏中にインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮を加えた9カ国の核弾頭総数が今年1月時点で推計1万3080発となり、昨年より320発減ったとする報告書を発表した。
ただ、中国は30発増の350発で、北朝鮮の推定保有数も30~40発から40~50発に増えた。日本は中朝両国の核兵器の脅威に備える必要がある。
「北が核計画を強化」
世界全体で減少したのは、総数の9割以上を保有する米露が老朽化した兵器を廃棄したことが主な要因だ。一方、実戦配備数は105発増の3825発で、米国が50発、ロシアが55発増やした。
米露は今年2月、失効寸前だった新戦略兵器削減条約(新START)を5年間延長した。しかし核戦力の増強を継続する中国が条約に参加しなければ、実効性に乏しいと言わざるを得ない。
中国の核兵器に関して、米国防総省は昨年9月に発表した年次報告書で、保有数を「200発台前半」と推計し、今後10年間で倍増すると警戒。核弾頭が搭載可能な空中発射弾道ミサイル(ALBM)の開発や、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の能力向上を図ることで、米国が持つ「核の三本柱」を追求しているとした。
特に、米領グアムを射程に収める中距離弾道ミサイル「東風26」(推定射程4000㌔)の配備数を増やしていると警告した。このミサイルは通常弾頭と核弾頭のどちらも搭載でき、空母などの大型艦艇に対する攻撃も可能とされる。
米国に対する中国の核兵器の脅威が高まることは、米国の同盟国である日本にも甚大な影響を及ぼすものだと言えよう。中国は日本に向けた核攻撃に使用できる中距離弾道ミサイル「東風21」(射程1750㌔以上)も多数保有している。
一方、SIPRIの報告書は前年から10発増えた北朝鮮について、核分裂物質の生産やミサイルの開発を続けたと分析。「引き続き軍事目的の核計画を強化している」と指摘した。
これに関連して、防衛省は2021年版防衛白書の素案で、北朝鮮が「わが国を射程に収める弾道ミサイルに核兵器を搭載して攻撃する能力をすでに保有している」と分析。北朝鮮の金正恩総書記は1月に開かれた朝鮮労働党大会で、米本土を狙う核戦力の強化方針を示した。日米は結束して中朝の核兵器の脅威に対抗すべきだ。
非核三原則の見直しを
日本はこれまで米国の「核の傘」に依存して核抑止力を維持し、核兵器を「持たず、つくらず、持ち込ませず」の非核三原則を堅持してきた。だが中朝の核戦力が増強される中、抑止力を向上させるには三原則の見直しに踏み込む必要があるのではないか。
特に「持ち込ませず」の縛りを解き、核兵器受け入れ国が使用に際して意思決定に加わるニュークリア・シェアリング(核兵器の共有)や、核を搭載した原子力潜水艦の寄港を認めることなどを検討すべきだ。