池田小事件20年、保安処分の導入を検討せよ


 児童8人が殺害され、15人が重軽傷を負った大阪教育大付属池田小学校の殺傷事件から20年が経過した。

 犯人の宅間守元死刑囚=2004年刑執行=が措置入院の退院後に事件を起こしたことが大きな問題となった。政府は治安維持を目的とした保安処分の導入を検討すべきだ。

 措置入院後に大量殺人

 宅間元死刑囚は01年6月8日、開いていた門から包丁を持って池田小に侵入し、1年生の男児1人と2年生の女児7人を殺害、児童13人と教諭2人に重軽傷を負わせた。何の罪もない子供たちを標的とした極悪非道な犯罪だった。

 事件前にも犯罪を重ねていた宅間元死刑囚だが、大半は精神障害を理由に不起訴処分となっていた。池田小事件の2年前には、勤務先の同僚4人に薬物を混ぜたお茶を飲ませて逮捕された。この時は責任能力がないとして不起訴、精神科病院への措置入院となったが、1カ月余りで退院して池田小事件を引き起こした。

 精神保健福祉法に基づく措置入院は、精神障害者が自分や他人を傷つける恐れがある場合、都道府県知事や政令市長が本人や家族の同意がなくても入院させることができる制度だ。しかし、対象者の医療、社会復帰促進の目的が重視された措置入院で池田小事件を防ぐことはできなかった。

 宅間元死刑囚は公判で「恵まれた子がけったいなおっさんに殺される不条理を世の中に分からせたかった」「もっと殺したかった」などと述べ、反省の態度を示すことはなかった。

 事件後も制度の抜本的な見直しがされないまま、16年7月には相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者の男女ら45人が殺傷される事件が発生した。犯人で元職員の植松聖死刑囚は、施設内で「重度障害者を殺す」などと話したため措置入院となったが、退院後に凶行に走った。

 池田小や相模原の事件では、子供や障害者という弱者が多数殺害された。措置入院後の犯人による卑劣で異常な犯罪は、何としても防がなければならないはずである。

 17年の通常国会に提出された精神保健福祉法改正案では、自治体が医療関係者や警察などから成る地域協議会を組織して入院中から患者ごとの支援計画を策定し、退院後は相談指導を行って転居した際は自治体間で引き継ぐとした。

 ところが、厚生労働省の説明資料に再発防止の趣旨が記されていたため「犯罪予防の保安的側面を背負わせかねない」との指摘が続出。国会でも同様の懸念が相次ぎ、法案は継続審議となった。

 人権を重視するあまり、治安を維持するための法改正に反対することは無責任だと言わざるを得ない。

 悲劇繰り返さぬ対応を

 このままでは悲劇が繰り返されることになりかねない。多くの国では、裁判所が再犯の恐れを理由に専門施設への収容、治療を決める保安処分が導入されている。

 日本でも導入を検討する必要があるのではないか。