北朝鮮の脅威 日米の連携強化で対処せよ


 日米首脳会談では台湾情勢や沖縄県・尖閣諸島問題などが議題に上り、メディアでも大きく報じられたが、日本の安全保障にとって北朝鮮の核・ミサイル脅威も忘れることができない重要テーマである。

SLBM発射の動きも

 北朝鮮問題についてトランプ前米大統領は自ら金正恩総書記との直接交渉に乗り出し、2018年6月に初の米朝首脳会談が行われた。同年4月に、北朝鮮は長距離弾道ミサイル発射や核実験を停止している。

 しかしその後、北朝鮮が非核化に向けた交渉に応じず核問題は再び進展のない状況が続いている。焦りを見せる北朝鮮は、再び米国に対する敵対姿勢を強めているが、同時にバイデン政権の出方を慎重に見極めようともしており、米国の強い反発が予想される米本土を射程に収めた長距離弾道ミサイルの発射は慎んでいる。

 一方、北朝鮮は今年3月、日本海に向けて2発の短距離弾道ミサイルを発射した。北による弾道ミサイルの発射は約1年ぶりで、バイデン政権発足後初の発射実験となった。さらに韓国情報当局等の分析によれば、北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の搭載が可能な3000㌧級の潜水艦を完成させ、またSLBMの発射実験を強行する動きも出ている。

 北朝鮮の潜水艦建造の技術は低く、SLBMも精度や射程距離などその能力は未だ限定的だ。しかし、米本土に与える脅威のレベルは低くとも、短距離弾道ミサイルやSLBMは地理的に北朝鮮に近い日本や韓国にとっては重大な脅威となる。北朝鮮が米国とその同盟国である日本や韓国との分断(デカップリング)を図り、日米韓の連帯や一致した対北朝鮮政策の形成を阻む目的で、SLBMの発射等を強行する可能性は高く、警戒を怠ることはできない。

 今月初めに日米韓の安全保障担当者が北朝鮮問題を協議し、非核化に向けて緊密に連携することが確認された。また日米首脳会談で発表された共同声明で、日米両国は国連安全保障理事会決議に従うよう北朝鮮に求めるとともに「北朝鮮の完全な非核化」に向けた取り組みを再確認した。

 現在米国は、対北朝鮮政策の包括的な見直し作業を急いでいるが、バイデン政権で外交安保政策を担当する高官の多くは、オバマ元大統領に仕えた人物である。

 オバマ政権は、北朝鮮が核放棄に向けて行動を改めない限り米国は動かないとの「戦略的忍耐」の政策を取った。その結果、オバマ政権の8年間に米朝交渉は完全に停滞し、北朝鮮の核・ミサイル開発の阻止に失敗。その能力を向上させるだけで終わった。

非核化求める強い姿勢を

 バイデン政権の北朝鮮政策がオバマ政権の亜流となり、同じ失敗を繰り返してはならない。日本は北朝鮮の脅威に備え防衛力の整備強化を急ぐとともに、北朝鮮問題に対する積極的な関与を米国に促し、北朝鮮の核開発や弾道ミサイル発射の暴挙を決して容認せず、あくまでその非核化を求めていくとの強い姿勢を示すべきである。