日米豪印プラス仏、枠組み拡大で対中圧力強化を


 フランス海軍主導で海上自衛隊と米国、オーストラリア、インドの海軍が参加する海上共同訓練「ラ・ペルーズ」がインド沖ベンガル湾で行われた。

 今回はインドが初めて参加したことで、インド洋を舞台に初の5カ国共同訓練が実現した。「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現に向けた連携を歓迎したい。

 インド沖で共同海上訓練

 ラ・ペルーズは2019年のスマトラ西方沖に続き2度目。海自の護衛艦「あけぼの」など各国から計8隻が参加し、対空戦や洋上補給などの訓練を実施した。

 日米豪印の枠組みは「クアッド」と呼ばれ、今年3月には初の4カ国首脳会談を開いて覇権主義的な海洋進出を強める中国を牽制(けんせい)。昨年11月には、ベンガル湾で実施された日米印合同海上演習「マラバール」に豪州が13年ぶりに参加するなど結束を誇示していた。

 今回はフランス主導の訓練に4カ国が参加したことで、民主主義や法の支配などの価値観を共有する国々と連携する「クアッドプラス」の形が整ったと言える。米国のトランプ前政権は中国に独自に圧力をかけたが、バイデン政権は多国間主義で中国に対抗しようとしている。クアッドの枠組み拡大で、人権抑圧や膨張政策を続ける中国への圧力を強めるべきだ。

 フランスはインド洋や南太平洋に海外領土を持ち、中国の進出を警戒していた。18年には、インド太平洋の概念を取り入れた安全保障政策を欧州でいち早く発表している。

 仏印豪は昨年9月、初の3カ国高官級協議を開催。フランスは今回の訓練の目的として、相互運用性強化のほか「戦略的地域での仏の展開能力の実証」(在印仏大使館)も掲げている。

 中国はインド洋でシーレーン(海上交通路)確保のため、インドを囲む形で港湾や空港の整備を支援しており、その形状から「真珠の首飾り」戦略と呼ばれる。ベンガル湾に面したミャンマーの港から原油や天然ガスを中国に運ぶパイプラインも設けた。

 中国は戦略的要衝のミャンマーを重視し、2月にクーデターが起きたミャンマーへの米英の制裁を批判している。中国のミャンマーに対する影響力が強まることは、クアッドが「自由で開かれたインド太平洋」構想を推進していく上でも大きな懸念材料である。

 英国やドイツなどほかの欧州諸国が、フランス同様の行動を取る可能性がある。英国は5月に最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を含む空母打撃群を、ドイツも8月にフリゲート艦を極東に送る予定だ。

 中国は南シナ海で独自の境界線「九段線」を主張している。仏英独は昨年9月、中国の南シナ海についての主張と活動は国連海洋法条約違反であるとの共同の立場を文書(口上書)で国連に提出した。

 日本は欧州と安保連携を

 欧州各国が本国から遠く離れたインド太平洋地域で訓練を展開することは、中国と地理的に近い日本にとっても意義は大きい。日本は安全保障面で欧州との連携を強化すべきだ。