コロナ禍2年目 宿泊・飲食業の体力が心配だ
自動車など輸出関連の製造業で回復が目立つ一方、宿泊・飲食などが再び悪化し、業種間の格差が鮮明になった――。3月の日銀全国企業短期経済観測調査(短観)が示した企業景況の実態である。
中でも、深刻な打撃を受けている宿泊・飲食では、新型コロナウイルス禍の2年目の突入で、大企業でも体力の限界に近づきつつある。製造業でも先行きの悪化を見込んでいて、予断を許さない状況である。
3府県「まん延防止措置」
企業の景況感は、全体としてみれば改善傾向にある。大企業では製造業、非製造業とも3期連続の改善だが、その度合いの程度は両者で大きく異なる。
業況判断指数(DI)は、大企業製造業が前期に比べ15ポイント改善して6期(1年半)ぶりにプラス(5)となり、コロナ感染拡大前の水準に回復。一方、大企業非製造業は4ポイントの改善でマイナス1と依然マイナス圏にとどまり、4期連続のマイナスである。中小企業も改善傾向は同様だが、水準は製造業マイナス13、非製造業マイナス11と厳しい状況が続く。
ただ、改善傾向は素直に喜べるものではない。3カ月後の先行きについて、堅調な大企業製造業でさえ、小幅だが悪化を見込み、大企業非製造業は横ばい、中小企業非製造業では5ポイントの悪化となっている。業種間の格差もそうだが、本格的な改善と呼べる状況ではないからである。
その原因はやはり、収束の様相を見せないコロナ禍の影響である。今回の短観で示された業種間の格差、ばらつきも感染再拡大に伴う緊急事態宣言の再発令による打撃や、観光需要喚起策「Go To トラベル」の全国停止などによってもたらされた。
また、緊急事態宣言解除後も感染「第4波」が現実味を増す中で、大阪、兵庫、宮城の3府県に「まん延防止等重点措置」の適用が決まった。これが追い打ちをかける形で、先行きの改善を予想していた宿泊・飲食の景況感は一時の淡い期待に終わり、厳しい状況が続いていきそうなのである。
コロナ倒産が中小の宿泊・飲食を中心に続いているが、大手でも安泰という状況ではなくなりつつある。昨年春の第1波では資金繰り支援に応じた金融機関も、追加の資金供給には選別姿勢を強めており、宿泊・飲食業界では大手でも経営体力の限界に近づきつつあるという。コロナ禍の長期化が致命傷になりはしないか懸念される。
加えて、製造業の先行き悪化をも招いている世界的な車載用半導体の不足と、それに伴う自動車業界への影響である。
効果的な追加支援を
不運にも3月には半導体大手ルネサスエレクトロニクスの工場火災が発生し、全面復旧には3~4カ月かかる見通しである。今回の短観では、自動車が鉄鋼や化学など他の幅広い関連業種で景況感の改善を牽引しただけに、先行きに暗い影を落としそうな状況である。
景況の本格的な改善にはコロナの収束はもちろんだが、宿泊・飲食などへの効果的な追加支援のほか、製造業でも適切なリスク回避策が必要ではないか。