聖火リレー、希望の灯で機運盛り上げよう


 トーチにともる火を文字通り希望の灯にしていきたい。東京五輪の聖火リレーがスタートした。新型コロナウイルス感染防止策を取りながらの異例の形となったが、安全を期しながら大会機運を盛り上げていきたい。

 約1万人のランナー参加

 昨年3月にギリシャのオリンピアで採火され福島県に到着した聖火は、大会の延期によって約1年間、国内で静かに燃え続けてきた。

 サッカーの2011年女子ワールドカップで優勝した日本代表(なでしこジャパン)のメンバーを第1走者とし、福島県楢葉町、広野町のサッカー施設「Jヴィレッジ」からスタートした聖火リレーは、開会式の7月23日までの4カ月間、約1万人のランナーによって全国47都道府県を巡る。大会組織委員会の橋本聖子会長は出発式で「日本全国に一つ一つ希望をともし、暗闇の先の一筋の光として、希望の道をつないでいくことを願っています」と語った。

 感染対策のため式典も一般の観客を入れずに行われた。沿道に住民らが駆け付けた楢葉町では、職員が「拍手で応援」「密集ダメ」などのプラカードを掲げた。東日本大震災からの復興を示す大会としては寂しいが、それでも福島を出発地として始まったことの意味は小さくない。

 沿道での主な感染対策としては、マスクの着用、応援は大声でなく拍手、居住都道府県以外での応援自粛などが示されている。組織委は密集しての観覧を控えるよう今後も沿道で呼び掛けていく。

 聖火リレーには、タレントやスポーツ選手など著名人がランナーとして参加するが、機運を盛り上げ、国民的な一体感を作る上で大きい。ただ沿道での密集を避けるため、走るコースについては直前まで明らかにしない。予定通り聖火リレーが行われるには、関係者、そして住民が今大会の特殊な事情を理解し協力することが求められる。

 新型コロナのパンデミックによって、東京五輪・パラリンピックは海外からの観客の受け入れを断念する異例の大会となる。約60万枚を販売していた海外向けのチケットは払い戻すことになり、その損失は大きい。

 また、インバウンド需要に期待した旅行業界にも痛手だ。そして何より、五輪を機会に、日本を知ってもらい、日本文化に触れてもらう機会が失われるのは残念なことだ。

 しかし、新型コロナの世界的な感染状況を見れば、海外からの観客の受け入れ断念はやむを得ない選択である。

 だが、このような状況にあるからこそ、人類が新型コロナに打ち勝った証しとして、東京五輪開催の意義は一層重みを増したと言える。来月には観客の入場をどこまで認めるかなど具体的な話し合いが行われるが、これまで行ってきたプロ野球などさまざまなスポーツイベントの経験が生かされることになる。

 安心・安全な大会を

 いま東北地方を巡っている聖火は開会式には、聖火台に点火される。その日から始まる大会を安心・安全な大会として成功させれば、そのこと自体が文字通り人類にとって大きな希望の灯となる。