同性婚否定「違憲」、婚姻の本質を見ていない


 耳を疑うような判決が出た。札幌地裁は、同性婚を認めないのは憲法14条が定めた「法の下の平等」に照らして「違憲」とする初めての判断を示した。婚姻の本質を見ない危険な判決と言うほかない。

 これを契機に、同性婚の法制化を求める動きが一層強まるだろう。婚姻の目的は「子を生み育てるもの」という民法の通説を再確認し、同性婚の法制化を防ぐ必要がある。

 5地裁で賠償求める訴訟

 同性婚が認められないのは婚姻の自由などを保障する憲法に違反するとして、国に対して損害賠償を求める訴訟は札幌地裁をはじめ全国5地裁で起こされ28人が争っている。札幌地裁は原告の賠償請求を棄却したが、国の実質敗訴である。

 同性婚の可否については、婚姻の目的をどう考えるかで全く違ってくる。2人の人間が子供を生み育てることなのか、それとも精神的・肉体的な結び付きを含めた共同生活とみるかだが、前者とすれば婚姻は男女に限定され、同性婚は論外だ。専門家(民法)の大多数は前者の意見だが、札幌地裁は後者を重視したのだ。

 伝統的には、性関係は生殖、そして婚姻と結び付いていた。わが国の婚姻制度が一夫一婦制を採るのは、その目的が「子を生み育てる」ことにあるからだということについては議論の余地はない。そこから結婚した男女カップルに限定した性関係が美徳として称(たた)えられ、さらにはそれが性倫理の基本となり、社会の秩序を支えている。

それが近年、性関係と生殖だけでなく、性関係と婚姻をも切り離して考える風潮が広まっている。「異性愛者と同性愛者の差異は、性的指向が異なることのみ」とした札幌地裁判決を読むと、裁判官でさえも男女の性関係が生殖に結び付いていることを軽視していることがうかがえる。性倫理の乱れや少子化の根底には、この問題が横たわっている。

 札幌地裁の判決が指摘したように、同性婚を認めてもいいという意見が増えているのは事実だが、社会の根幹に関わる婚姻制度を変えることは社会の混乱を招く。世論も婚姻制度の目的について十分理解しているとは思えない。これまでこの問題についてあまり議論されてこなかったからだ。この点は国にも責任がある。

 もし同性婚が法制化されれば、生殖と性関係を切り離す風潮はさらに強まり、性秩序の一層の悪化を覚悟せざるを得なくなるだろう。この判決をきっかけに、国民に婚姻制度の目的を再認識してもらう取り組みを進めるべきだ。

 憲法に「家族条項」導入を

 駒澤大学名誉教授の西修氏は著書『世界の憲法を知ろう』で「家族とは、男と女、その子どもたちによる安定した結合体(けつごうたい)であって、また両親のいずれかがその子孫とともに形成する共同体である」とするパラグアイ憲法を紹介しながら、これ以上の家族と伝統社会の崩壊を防ぐためには、日本の憲法への「家族条項」導入が必須だと訴えている。われわれも同性婚の法制化を防ぐため、家族条項を導入する憲法改正を呼び掛けたい。