米の台湾重視、中国牽制へ次期政権も堅持を


 米国のポンぺオ国務長官は、外交官や軍人らによる台湾の当局者との接触を自主規制してきた米政府の内規を見直し、このような規制を全て無効にするとの声明を発表した。

 自由と法の支配、人権尊重など基本的な価値観を共有し、民主主義が定着した台湾を重視するもので、政権交代に左右されることなく近く発足するバイデン政権においても不変の方針として堅持してほしい。

 高官訪問で関係を格上げ

 昨年、中国は民主主義制度を取る香港の自治を認めた「一国二制度」の国際公約に反する形で国家安全維持法を全国人民代表大会で制定して香港に適用し、一連の民主派逮捕に乗り出した。これに米国では共和党、民主党を問わず上院が全会一致で金融で対抗措置を取る対中制裁法を成立させた。2019年には香港の人権や「一国二制度」の状況を検証する「香港人権・民主主義法」を制定している。

 このような超党派的な取り組みが今後も必要であることは言うまでもない。米国は民主主義国の中心的な国家であり、自由主義陣営のリーダーとして影響力を発揮してきた。しかし、大統領選挙をめぐり生じた米国内の亀裂は暴動や騒乱を招き、深く憂慮されることだ。特に、米連邦議会で一部のトランプ大統領支持者が起こした侵入事件は極めて深刻だ。一日も早い修復を願いたい。

 混乱した事態の中でポンぺオ氏は、政権移行の手続きに専念するため自身の残る外交日程を中止することを発表し、13日から予定されていたクラフト米国連大使の台湾訪問も中止になった。すでに米国はアザー厚生長官、インド太平洋軍のスチュードマン海軍少将らの台湾訪問を行っており、米台関係を格上げしている。いずれ国連大使の訪台も実現しよう。

 米国は中国に対して改革・開放路線に協力していけば自由市場や民主主義国に同調していくとみた楽観的な関与政策を失敗だったと総括し、対中外交を転換させた。トランプ政権の下で、18年に台湾旅行法を全会一致の超党派で制定して高官の往来を法的に裏付け、昨年3月には台湾同盟国際保護強化イニシアチブ法を制定して台湾の国際機関への加盟やインド太平洋地域の国々との関係強化を促した。これらの積み重ねの上に、政府や軍同士の交流がさらに行われていくべきだ。

 中国は台湾統一を目指しており、武力行使を辞さない陸海空からの軍事的な威嚇を強めている。民主主義を弾圧する共産党独裁体制の強権統治が、香港で実際に起きている。一昨年、香港市民が逃亡犯条例改正案に反対して大挙してデモ行進した危機感が現実のものとなり、「今日の香港は明日の台湾」と叫ばれたが、これを阻止しなければ、その影響はわが国にも飛び火するだろう。

 わが国も台湾重視を

 台湾とわが国はすぐ近くに位置し、同じ民主主義体制を取る運命共同体の関係だ。日米同盟とともに、米台関係の深化は、東シナ海や南シナ海に海洋進出する中国の「力による現状変更」に対する抑止力になる。わが国にも台湾重視を望みたい。