児童虐待、コロナ機に家庭の価値重視を
2019年度に全国の児童相談所(児相)が対応した虐待相談件数(速報値)は、前年度比3万3942件(21・2%)増の19万3780件だった。1990年度の集計開始以来最多を更新し、前年度からの増加幅も過去最大となった。
政府や自治体は、子供の数が減り続ける中、虐待の件数が大きく増加したことに強い危機感を持って対応すべきだ。
「面前DV」が大幅増
内容別では、児童が家庭内暴力を目の当たりにする「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」など「心理的虐待」が10万9118件(前年度比2万727件増)と大幅に増加。次いで「身体的虐待」が4万9240件(同9002件増)だった。
直接の虐待はもちろん、面前DVも子供の心身に深刻なダメージを与える。両親の罵り合いを聞いて育った子供の脳は、正常な脳に比べて20%近くも縮小するとの研究結果も出ているという。
DVと同時に、子供への身体的虐待が起きているケースも多く見られる。18年3月に東京都目黒区、19年1月に千葉県野田市で起きた虐待死事件では、いずれも母親が父親からDVを受けていたことが裁判で明らかになっている。
子供は将来、国家や社会を支える立場に立つ。日本で現在、少子化が大きな問題となる中、虐待件数が増加していることは国家的危機だと言っても過言ではない。
目黒区の事件を受け、政府は18年末、虐待対応を担う児童福祉司を22年度までに2020人程度増員する児相の体制強化プランを策定した。子供を守るには、増員と共に専門性の向上も欠かせない。児童福祉司が3~4年で異動となる現状を変える必要もあろう。
新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛などの影響で虐待リスクが高まる恐れもある。自治体は支援の必要な児童らの見守り強化などを進めることが求められる。
もっとも児童虐待が増え続ける背景には、行き過ぎた個人主義の蔓延(まんえん)があろう。親になる覚悟がないまま、安易に男女の関係を結んで結婚すれば、子供が誕生しても育児に対する責任感は薄くなりかねない。
新型コロナ禍をめぐっては、DVや虐待の増加が懸念される一方、家族が共に過ごす時間が増えたことで絆が強まったという声も多い。明治安田生命保険のアンケート調査によると、新型コロナの影響で夫婦仲が「良くなった」と答えた人の割合は19・6%で「悪くなった」の6・1%の3倍超に上った。
仲が良くなった理由は、在宅勤務などを通じ「コミュニケーションや会話の機会が増えたため」が6割と最も多かった。会話によって、互いを理解し、共感し合うことが関係を深める鍵のようだ。
改憲で「家族条項」を
新型コロナ禍を機に、政府・与党には結婚や家庭の価値を重んじて家族の絆を強める政策を進めてほしい。
「家族条項」を盛り込む憲法改正や三世代家族の重視などを児童虐待防止につなげていく必要がある。