ISS長期滞在、野口さんらの活躍に期待する


 日本人宇宙飛行士、野口聡一さんが3度目の国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在に挑戦中である。来年春ごろに星出彰彦さん、2022年には若田光一さん、23年ごろに古川聡さんの長期滞在が決まっている。

 ISSで日本は全体をまとめる船長も経験するなど存在感を高めてきた。こうした経験をさらに深めて、米国主導の国際月探査「アルテミス計画」における日本のプレゼンスのさらなる向上につなげてほしい。

 月面探査を見据える

 野口さんはISS滞在中に日本実験棟「きぼう」などで、さまざまな実験を行う。たんぱく質の結晶成長実験や超小型衛星の放出、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った立体組織の形成実験などである。

 宇宙からの発信にも余念がない。長期滞在早々に、福井県立若狭高校の生徒が開発したサバの缶詰を食べる様子を自身のユーチューブで公開。「大変おいしい」と感謝する動画を配信して、高校生らを喜ばせた。

 今回、野口さんは「挑戦」をテーマに据えている。今回が運用初号機となった米民間宇宙船クルードラゴンという新型宇宙船への対応や、新型コロナウイルス禍での制約、日本人最年長の55歳という年齢など、さまざまなハードルに立ち向かう気持ちを表したものである。特に「体力的にも精神的にも過酷と言われる船外活動(宇宙遊泳)に参加し、55歳でもやれることを示したい」と意欲を見せる。

 こうした経験は、日本人2人目の船長を務める予定の星出さんや、5度目の宇宙飛行、ISS長期滞在3度目の若田さん、宇宙飛行と長期滞在いずれも2度目となる古川さんにとっても大いに参考となるだろう。

 とはいえ、星出さんは51歳、若田さんは57歳、古川さんが56歳。有人宇宙開発を継続するには新しい人材が欠かせない。文部科学省と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、13年ぶりに宇宙飛行士を新たに募集すると発表したのもそのためである。具体的には、日本が参加を表明したアルテミス計画を見据えてのものである。

 若田さんが22年のISS長期滞在決定の会見で表明したように、日本の有人宇宙活動は新たな局面を迎えている。現在のISS計画では24年以降の運用が未定で、日本人の滞在が古川さんで最後になる可能性もあるからである。

 「『きぼう』日本実験棟での成果の創出を通して、月面探査へつなげていけるよう努力したい」――会見での若田さんのコメントには「日本のプレゼンスを高めることにつながる」という前向きな面と共に、もう後がないという切迫感もないではないであろう。

 今後の活動、成果が重要

 もちろん、これまでの、例えば、無人物資輸送機「こうのとり」が示した確実性やそれを裏付けた緻密な運行システムと軌道間輸送機としての可能性、無人探査機「はやぶさ2」のピンポイント着陸の正確性などを合わせれば、こうした心配は杞憂(きゆう)かもしれない。ただ、独自の有人輸送手段を持たない日本においては、これからの活動、成果が極めて重要である。