核廃棄物処分場 理解広げる情報発信強化を


 高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分地選定をめぐって、北海道寿都町の片岡春雄町長が第1段階の「文献調査」に応募する考えを正式表明した。

 ただ風評被害に対する地元住民の懸念は根強く、賛否は割れている。地元はもちろん国民の理解を広げるため、国には最終処分場の安全性についての情報発信強化が求められる。

 寿都町が調査に応募

 寿都町議会で開かれた全員協議会は賛否が伯仲したものの、最終的に議長が「町長の政治判断を尊重する」と明言。片岡町長は一定の地元理解が得られたと判断した。

 国は原発の使用済み核燃料に残るウランとプルトニウムを燃料に再利用する「核燃料サイクル」を進めている。この中で数%の再利用できない放射性物質を廃棄するために必要なのが最終処分場だ。

 廃棄物は安全管理のため、溶かしたガラスに混ぜて「ガラス固化体」にする。その後、金属容器に入れて地下300㍍より深い地点に埋める。処分場は数万年以上閉鎖され、放射能が減るのを待つという仕組みになっている。

 国は文献調査を引き受けた自治体に、最大20億円を交付。第2段階の「概要調査」や第3段階の「精密調査」などを含めると、調査が終了するまで約20年かかる。

 各地の原発では使用済み核燃料が計1万6000㌧保管されており、貯蔵容量の7割を超えている。最終処分地の選定は避けることのできない課題だ。

 文献調査後、次の段階に進むには、市区町村長や知事の同意が欠かせない。北海道には核廃棄物受け入れに反対する条例があるため、寿都町で概要調査ができるか見通しは不透明だ。

 地元の懸念は強い。北海道漁業協同組合連合会などは、寿都町が文献調査の受け入れ検討を表明した8月、風評被害などを念頭に「応募に断固反対する」と抗議。隣接3町村も「住民に不安が広がる」と訴えた。国は道や市町村の理解を得られるよう、最終処分場の安全性について丁寧に説明すべきだ。

 一方、同じ北海道の神恵内村も応募を表明する見通しだ。片岡町長は「国、都道府県、各市町村で議論の輪を広げることが大事だ」と述べた。その通りである。

 最終処分地については、2007年に高知県東洋町が文献調査に応募した。だが町民らが賛否に分かれて対立し、議論が深まらないまま頓挫した。

 寿都町の応募をめぐっても、片岡町長の自宅を燃やそうとしたとして、町内に住む77歳の男が放火未遂の疑いで逮捕される事件が起きた。感情的な対立からは何も生まれない。冷静な議論を期待したい。

 正しい知識を基に判断を

 原発事故が起きた福島県は、現在も農林水産物への風評被害に苦しんでいる。厳しい検査で安全性が確認されているにもかかわらずである。

 このような風評は非科学的なものだ。核廃棄物の最終処分場に関しても、地元住民はもちろん、国民一人一人が正しい知識に基づいて判断することが求められる。