日米豪印外相会談 地域の安定と発展につなげよ


 各外相は「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現に向け、自由貿易や法の支配などの価値観を共有する諸国との幅広い連携を目指す方針で一致。この会合を年1回のペースで継続することでも合意した。日米豪印の関係強化を地域の安定と発展につなげるべきだ。

中国を牽制する狙い

 会合には、茂木敏充外相のほか、ポンペオ米国務長官、ペイン豪外相、ジャイシャンカル印外相が出席した。この4カ国外相会合は昨年9月の米ニューヨーク以来で2回目。新型コロナウイルスの流行が世界に広がって以降、初めて日本で開催される閣僚会合となった。

 この会合には、経済、軍事の両面で存在感を高める中国を牽制する狙いもある。日米豪印の連携は安倍晋三前首相が提唱したもので、米国と共に具体化を進めてきた。

 中国は、チベット、新疆ウイグル、内モンゴルなどの少数民族の人権を抑圧し、民族独自の文化を否定する同化政策を強行している。香港では、国家安全維持法で一国二制度を骨抜きにした。さらに、台湾統一に向けて武力行使も辞さない方針を示し、国際法を無視して南シナ海の軍事拠点化を進めるなど地域の平和と安定を脅かしている。

 このような横暴な振る舞いを看過できないのは当然である。ポンペオ氏は会合で「中国共産党の腐敗、搾取、威圧から人々を守らなければいけない」と語った。

 7月の対中政策に関する演説で、ポンペオ氏は習近平国家主席のことを「破綻した全体主義的イデオロギーの信奉者」だと名指しで批判。「自由世界はこの新たな暴政に打ち勝たなくてはならない」と述べ、民主主義国が連携して中国の脅威に対抗するよう呼び掛けた。

 自由、基本的人権の尊重などの普遍的価値を共有する日米豪印の会合は、こうした主張に沿ったものだと言える。インドは国境紛争で中国の攻勢にさらされ、豪州もモリソン首相がコロナ発生源をめぐる国際調査を要求したことがきっかけで、中国との関係が悪化した。4カ国にさらに多くの民主主義国を加えて枠組みを拡大し、対中包囲網を構築することが求められる。

 会合に先立ち、菅義偉首相はポンペオ氏との会談で、日米同盟を一層強化し、豪州やインドなどと緊密に連携していくことを確認した。日米同盟は日本の安全保障だけでなく、地域の繁栄と安定にも寄与する「公共財」であり、日米豪印の連携においても重要な位置を占めている。

民主国家の連携主導を

 米国では来月、大統領選が行われる。共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領のいずれが勝っても、米国の対中強硬姿勢は基本的に変わらないと予想されている。

 ただバイデン氏が、共産党一党独裁体制の中国が深刻な脅威であるという明確な認識を持っているかどうかは疑わしい。どちらが大統領になるとしても、菅政権は中国封じ込めに向け、日米豪印をはじめとする民主主義国の連携を主導すべきだ。