国連一般討論 新型コロナで中国批判は当然


 国連は創設75年を迎えた。各国首脳による一般討論演説では、米国のトランプ大統領が中国に対し新型コロナウイルス感染拡大の責任を取るべきだと厳しく非難する一方、中国の習近平国家主席は感染拡大の政治問題化に反対した。新型コロナ感染に加え、近年の中国が起こす人権・宗教・民族弾圧問題などを、国連は米中2カ国の対立に矮小(わいしょう)化させるべきではない。

 トランプ氏が責任を追及

 新型コロナ感染が引き起こした世界流行(パンデミック)の事態に、各国首脳たちは第2次世界大戦以来の最大の試練だと表明しながら、トランプ氏以外に発生源の中国にものを言えなくなっているのは残念だ。

 演説でトランプ氏は、新型コロナ感染が広がり始めた早い段階で「中国が都市封鎖を行い、国内移動を制限していながら国際線で国外への移動は認めていた」ことや「中国と中国に支配されている世界保健機関(WHO)は人から人への感染の証拠はないと、間違った宣言をした」ことを非難。「国連は中国に責任を取らせなければならない」と糾弾した。

 国連演説で米大統領が特定の国名を挙げ、激しい批判の言葉を浴びせるのは極めて異例だ。しかし、トランプ氏は2017年に核開発や核弾頭ミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長に対して「ロケットマンが自殺行為の任務を遂行している」などと厳しい発言をした。

 今回も政治経歴がなく大統領になった型破りな言動を持ち前に、鋭い舌鋒(ぜっぽう)を中国に浴びせたが、トランプ氏の批判は国連の形骸化批判でもある。

 新型コロナによる肺炎患者が昨年12月に中国・武漢市で確認され、深刻な事態を指摘した医師たちは当局に拘束された。結局、インターネット交流サイト(SNS)を通して危機が告発されたのをきっかけに、世界が関心を寄せるようになった。

 いち早く世界に警告する立場だったWHOは、中国が武漢を都市封鎖した1月23日になっても緊急事態宣言を見送り、当時の春節シーズンに多くの中国人が海外に出て行った。この中国とWHOの初動対応の後れが世界を直撃している。

 本来であれば、昨年12月の段階で保健を統轄する国連専門機関であるWHOが調査するなど迅速な対応が必要だった。これが果たされなかったことは、国連にも責任がある。

 片やトランプ氏と対照的に、習氏は演説で「自国一国主義」を批判し、60年までの温室効果ガス排出量実質ゼロ目標、国際協調、自由貿易などを主張して国際社会の優等生を演じた。

 この発言が事実と一致するかが問題であろう。沖縄県・尖閣諸島、南シナ海、インド国境にまで「力による現状変更」を試みる中国の覇権的な自国中心の動きや、新疆ウイグル、内モンゴル、チベットの3自治区、香港への人権侵害、宗教弾圧は見過ごせない。

 批判なければ大きな禍根

 フランスのマクロン大統領は演説で、新疆ウイグル自治区への国際調査団派遣を求めた。中国にものを言えない国連外交は大きな禍根となる。