日米同盟 自主防衛力増強で片務性正せ
トランプ米大統領が新しい駐日大使に指名した保守系シンクタンク「ハドソン研究所」所長のケネス・ワインスタイン氏が、上院外交委員会の公聴会で「日米同盟の中でさらなる能力拡大と大きな責任を負うよう日本に働き掛ける」と表明した。
この発言は、軍事力を増強し、覇権主義的な動きを強める中国を念頭に置いたものだ。安全保障面での日本の役割拡大に対する米国の期待は大きい。
トランプ氏も不満を表明
日米安保条約が改定されてから今年で60年となる。第5条は米国の対日防衛義務と日米の共同対処、第6条は米軍への基地提供を規定し、米軍が「矛」、自衛隊が「盾」の役割を受け持ってきた。
一方、トランプ氏は昨年6月、20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に向かう直前、米メディアのインタビューで「米国が他国から攻撃を受けても日本は何もしない」と日米安保条約に強烈な不満を表明。G20閉幕後の記者会見でも、条約に基づく防衛義務が「不公平だ」と主張した。
日米同盟の片務性はトランプ政権以前から指摘されてきた。日本が外国に攻撃されれば、米軍兵士は命懸けで日本を守る。しかし、米国が攻撃を受けても自衛隊が米国を守ることはほとんどできない。この事実を日本は直視する必要がある。
安倍政権は日本の役割拡大に取り組んできた。2014年7月には、集団的自衛権の行使を限定容認するための憲法解釈変更を決定。これに基づいて15年9月には集団的自衛権の一部行使を可能にする安保関連法が成立し、米艦の防護や燃料補給なども行われた。
とはいえ、日本の集団的自衛権行使には多くの制約があり、日米同盟の片務性解消には程遠い。こうした現状がトランプ氏の発言につながったと言える。トランプ氏の不満は米国の本音でもある。
同盟の信頼性を向上させるには、自主防衛力を増強し、片務性を是正していくことが欠かせない。陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画断念を受け、自民党のミサイル防衛に関する検討チームは、他国領域内への打撃力保持を含む抑止力向上を安倍晋三首相に提言した。北朝鮮などのミサイルの脅威が高まる中、敵基地攻撃能力の保有は不可欠である。
集団的自衛権を全面行使するには、憲法9条の改正も急がれる。国会の憲法審査会での議論は停滞しているが、中国や北朝鮮によって日本を取り巻く安保環境は悪化しており、改憲への機運を高めていく必要がある。
一層の関係強化を期待
ワインスタイン氏は上院の承認が得られれば、今年11月の上院選に立候補するために昨年7月に辞任したハガティ前大使の後任として日本に着任する。日本専門家ではないが、対日関係を重視し、安倍首相に近いことで知られる。
公聴会では「日米同盟はインド太平洋地域の平和、安全、繁栄の要になっている」と称賛した。ワインスタイン氏の大使着任が日米関係の一層の強化につながることを期待したい。
(当記事のサムネイルはWikipediaから引用いたしました)