お盆帰省 高齢者の感染防止策万全に


 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、お盆の帰省をどうするか多くの人が迷っている。

 政府と地方自治体の見解が異なり、国民一人一人に判断が委ねられる形となっている。帰省する際は高齢者への感染防止対策に万全を期したい。

首相は自粛を求めず

 安倍晋三首相は新型コロナの感染状況について、新規感染者は4月の緊急事態宣言時より多いものの、死者数や重傷者数は「大幅に抑えられている」と指摘。「直ちに緊急事態宣言を出すような状況ではない」との判断を示した。

 その上で、夏休みの帰省について一律の自粛は求めず「3密を避け、大人数の会食を控えるなど、高齢者らへの感染につながらないように十分な注意をお願いしたい」と呼び掛けた。

 これに対し、東京都の小池百合子知事は「お盆、夏休み期間は都外への旅行、帰省はお控えいただきたい」と述べた。政府が帰省の自粛を呼び掛けていないことに関しては「地域によって事情が違う」との見解だ。

 一方、吉村洋文大阪府知事は「体調管理などをした上なら帰省すること自体は問題ない。家族で盆を過ごすのは行政が自粛を求めるものではない」と述べている。

 帰省客を迎える側の首長は「東京からの帰省は自粛してほしい」(杉本達治福井県知事)など概ね、感染拡大地域からの帰省は慎重にしてほしいというものが多い。しかし「友達や親戚に会う重要な機会。県民には帰省する人を温かい心で迎えてほしい」(三村申吾青森県知事)という知事もいる。

 行政の判断とは別に、観光業者などは、コロナ感染は怖いが帰省客に来てほしいという気持ちもある。そのために、これまで感染対策を工夫してきた業者も多いはずだ。

 故郷への帰省は、久しぶりに父母や祖父母と再会し、先祖の墓に参るという日本人にとっては特別な時である。孫たちとしては、祖父母と交わり、都会にはない自然に触れられる楽しい時であり、祖父母にとっては孫たちの成長ぶりを目にするまたとない機会である。

 こうした久しぶりの交わりが感染につながらないよう、細心の注意を払いたい。田舎では一戸建ての比較的広い家に住んでいるケースが多い。帰省した家族の宿泊スペースと祖父母の居住空間を1階と2階で別々にできるか否かなど、帰省した場合の感染対策を十分にとれるか具体的にイメージし、判断するのも重要だ。

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、帰省する際、重症化しやすい高齢者への感染を防ぐため、大声を避け、十分な換気を行い、特に大人数での会食を控えるよう呼び掛ける提言を発表。対応できない場合は「オンライン帰省」を含めて慎重に判断するようにも求めた。

オンラインで絆深めたい

 最近は高齢者でもオンラインを利用する人が増えている。今夏のオンライン帰省をきっかけに、離れた親子、祖父母と孫たちが日ごろからオンラインで交流するようになれば、家族の絆もより深まるだろう。