原爆の日 核廃絶よりも抑止力向上を
広島はきょう、長崎は9日に75回目の「原爆の日」を迎える。深く静かに鎮魂の祈りを捧(ささ)げ、平和への誓いを新たにしたい。
核戦力を増強する中朝
広島市ではきょう、平和記念式典が開かれ、被爆者や遺族、安倍晋三首相らが参列。今年は新型コロナウイルス対策で参列者席を大幅に縮小し、参列予定だった国連のグテレス事務総長はビデオ映像であいさつする。
わが国は核兵器による惨禍を体験した唯一の国だけに、核廃絶への思いもひときわ強い。当然のことである。国連では2017年7月、核兵器禁止条約が採択された。日本は条約に賛同していないが、原爆の日を迎える中で署名・批准を求める声も高まろう。
しかし、日本を取り巻く安全保障環境は厳しい。20年版防衛白書では、北朝鮮が日本を射程に収める核搭載の弾道ミサイルを「既に保有しているとみられる」と明記。兆候を探知しづらい潜水艦や移動式発射台からの発射など、攻撃形態を複雑化させており、核の脅威は高まっている。
またスウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の推計によれば、世界全体の核弾頭総数が減少する中、中国や北朝鮮は昨年よりも増やしている。特に中国は「核関連設備の重大な近代化」を進めているという。
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、朝鮮戦争(1950~53年)の休戦67年に合わせて平壌で開かれた大会で「50年代の戦争のような苦痛を再び繰り返さないように、絶対的な力を持たなければならず、核保有国への自己発展の道を歩んできた」と強調し、核保有を正当化した。いくら核廃絶を叫んだところで、北朝鮮や中国が核を手放すわけではない。
平和を維持するために日本に求められるのは抑止力の強化である。核攻撃を抑止するには、日米同盟を強化して米国の核の傘を確保し続けることが死活的に重要だ。
米国は18年2月に公表した「核態勢の見直し」(NPR)で、米国や同盟国のインフラなどに対する非核攻撃にも核で報復する可能性を明記。核の傘を含む同盟国のための拡大抑止強化を目指す姿勢を示した。
一方、日本は「持たず、つくらず、持ち込ませず」の非核三原則を堅持している。これに対し、自民党の石破茂元幹事長は、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備方針撤回を受けて「『持ち込ませず』で本当にいいのか」と見直しの議論を行うよう求めた。
これは、米国の核兵器を日本に置いたり、核を搭載した原子力潜水艦の寄港を認めたりすることを念頭に置いたものだ。ドイツやイタリアなどは自国内に米国の核を配備するニュークリア・シェアリング(核兵器の共有)を行っている。北朝鮮や中国の核戦力が増強される中、日本も三原則見直しを検討する必要があるのではないか。
敵基地攻撃能力の保有を
自民党のミサイル防衛に関する検討チームは、政府に敵基地攻撃能力を保有するよう提言した。核ミサイルから日本を守るため、政府は保有を急ぐべきだ。