「制宙権」争い 米は衛星防衛能力の向上を


 米国とロシアはウィーンで宇宙空間の安全保障に関する会議を行った。米露両国が宇宙の安保をめぐり正式に協議するのは2013年以来、7年ぶり。両国は引き続き対話を継続する必要性を確認した。

 中国やロシアは衛星攻撃兵器の開発を進めている。米国は中露両国との協議を重ねるとともに、衛星防衛能力の向上を図る必要がある。

 攻撃兵器を開発する中露

 冷戦時代、宇宙は米ソ2極構造で「お互いの宇宙システムは攻撃しない」という暗黙の了解があった。しかし現在は多極構造となり、宇宙は戦闘領域へと変わった。

 米露に中国を加えた3カ国の間では宇宙の軍事的支配権「制宙権」争いが激化している。米国は昨年12月、6番目の独立軍として「宇宙軍」を創設。ロシアは15年に空軍と航空宇宙防衛軍を統合した「航空宇宙軍」、中国は同年末に人民解放軍にサイバーや衛星防衛担当の戦略支援部隊を新設した。

 中露は表立っては宇宙の平和利用を提唱し、国際的に軍事利用を制限する必要性を訴えてきた。だが、中国は07年に衛星攻撃兵器の実験を行ったほか、電波妨害兵器やレーザー兵器、キラー衛星などさまざまな衛星攻撃兵器を開発している。

 ロシアは先月、地球周回軌道上にある「衛星」から物体を発射する実験を実施したが、米宇宙軍はこの「衛星」が17年にも同様に物体を発射していたことから、キラー衛星の可能性があると指摘。これに対し、ロシア側は「宇宙空間でいかなる兵器実験も行っておらず、宇宙に兵器は不要だ」と反論した。

 米軍の活動は情報収集から通信、精密誘導爆撃、ミサイル防衛に至るまで、衛星などの宇宙資産に依存している。特に、米本土から離れた西太平洋地域などに戦力投射を行う場合に重要性が増す。中露の衛星攻撃兵器でこうした資産が無力化されれば、米軍の優位性が失われ、同盟国日本への影響も大きい。

 日本では今年5月、航空自衛隊に宇宙作戦隊が発足した。しかし現在のところ、宇宙における脅威に直接対処する能力はない。このため、米国との連携強化が求められる。

 日米では23年にも、日本独自の測位衛星・準天頂衛星に米国の宇宙状況監視(SSA)センサーを搭載する予定だ。こうすれば、衛星を攻撃しようとする国は複数国への影響を考慮して攻撃しにくくなるため、抑止力が高まることになる。米国の一部の衛星が破壊された際に、他の衛星で迅速に代替する能力も向上させる必要がある。

 中国の動きに警戒強めよ

 一方、中国は30年までに米露に次ぐ「宇宙強国」となる目標を掲げ、軍事力強化と一体で宇宙開発を急いできた。先月には中国版全地球測位システム(GPS)「北斗」が全面稼働した。

 また昨年には、世界で初めて無人の月面探査機を月の裏側に着陸させることに成功。先月には、火星への着陸を目指す探査機を打ち上げた。中国共産党創立100年となる来年に向け、国威発揚にもつなげたいものとみられる。中国の宇宙での動きに警戒を強めるべきだ。