国連安保理 日本は先頭に立って改革を


 国連のグテレス事務総長は演説の中で、国際機関における大国が「不平等を無視している」と批判した。
 国連安全保障理事会の5常任理事国を念頭に置いた異例の発言だ。機能不全が指摘される安保理の改革に向け、日本は先頭に立たなければならない。

事務総長が大国を批判

 グテレス氏はインターネットを通じての演説で「70年以上前にトップに立った国々が、国際機関内での力関係を変えるために必要な諸改革を熟考することを拒んでいる」と強調。「国連安保理の構成や投票権などが典型例だ」と述べた。

 世界平和実現のために大きな責任を負う安保理で、拒否権を行使できるなどの特権を持つ常任理事国は、米国、英国、フランス、ロシア、中国の5カ国だ。しかし、これまで安保理が世界各地の紛争などに十分に対処してきたとは言い難い。

 日本にとって深刻な脅威となっている北朝鮮の核開発をめぐって、安保理は核関連の物資や技術の移転を禁じるなどの制裁決議を重ねてきた。だが、北朝鮮の後ろ盾となっている中国やロシアが制裁の緩和を主張するなど安保理が一致団結できず、北朝鮮の核開発を止められない状況が続いている。

 それだけではない。中露両国は「力による現状変更」で地域の平和と安定を破壊している。ロシアはウクライナ南部クリミア半島の併合を強行し、中国はオランダ・ハーグの仲裁裁判所判決を無視して一方的に南シナ海の軍事拠点化を進めている。中露両国に常任理事国の資格があるとは到底思えない。

 国連創設から間もなく75年となる。加盟国は当初の51カ国から193カ国に拡大したが、安保理の構成や意思決定の方法などはほとんど変わっていない。これで21世紀のさまざまな課題に対応できるか疑問が残る。

 1956年に国連に加盟した日本は、これまで安保理の非常任理事国を加盟国中最多の11回務めてきた。2008年の非常任理事国選挙では、モンゴルが日本のために立候補を取り下げ、日本が当選するなど、日本の国連における働きは国際社会で大きな信頼を得ている。

 安倍晋三首相は昨年9月、国連総会の一般討論演説で「安保理の変革を主眼とする構造改革が必須だ」と主張。常任理事国拡大などの国連改革の早期実現に意欲を示した。

 常任理事国が簡単に特権を手放すとは考えられない。しかし安保理の機能向上のためにも、日本と同じように国連改革を目指すドイツ、ブラジル、インドなどと共に粘り強く取り組む必要がある。

旧敵国条項削除を目指せ

 もう一つ強く求めなければならないのが、国連憲章からの旧敵国条項削除である。これは、第2次世界大戦中に連合国の敵であった日独伊など枢軸諸国に対し、再侵略防止などのために自由に武力を行使できるというものだ。

 1995年に国連総会で削除決議が採択されたが、沖縄県・尖閣諸島の奪取を狙う中国が悪用する恐れも否定できない。日本は国連憲章改正による削除を目指すべきだ。