石炭火力削減 原発の新増設が不可欠だ


 政府は、発電効率が低く二酸化炭素(CO2)を多く排出する旧式の石炭火力発電所を2030年度までに休廃止する方針を示した。
 石炭火力は原子力と共に安価に一定量を発電し続けられる「ベースロード電源」と位置付けられている。削減するのであれば、電力の安定供給のためにもCO2を排出しない原発の新増設が不可欠だ。

高まる日本への国際批判

 石炭火力をめぐっては、発電所の輸出に原則として公的支援を行わない方針も決定された。成長戦略の一環として石炭火力輸出を重視してきた政府方針の大きな転換となる。

 背景には、地球温暖化を防止するため「脱炭素化」を求める国際世論が強まる中、日本の取り組みは消極的だとの批判が高まっていたことがある。欧州諸国は石炭火力の全廃を相次ぎ決定している。

 旧式の石炭火力は国内に114基あり、休廃止は9割相当の100基程度が対象となる見通しだ。梶山弘志経済産業相は「非効率な石炭火力をフェードアウトする仕組みを導入する」と強調した。

 政府は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」で、30年度に13年度比で温室効果ガスの排出量を26%減らす目標を設定している。温暖化防止に向けた石炭火力の削減は環境先進国の日本の責務でもある。

 とはいえ、低コストの石炭火力を減らせば、電気料金が上昇し、家庭や企業の負担が増しかねない。エネルギー安全保障の観点から見ても、石炭は石油や液化天然ガス(LNG)よりも産出地域が多いため、調達しやすいメリットがある。こうした点への目配りも求められる。

 電力業界ではエネルギー資源の乏しい日本やアジア諸国での石炭火力全廃は難しいとの見方が強い。政府は環境負荷の小さい新式発電所は維持・拡充する方針だが、国際社会の理解を得るとともに、一層の技術向上で新式のCO2排出量もさらに減らしていく必要がある。

 国の中長期的なエネルギー政策を定めた「エネルギー基本計画」では、18年度に32%を占めた石炭火力を30年度に26%へと低減させる。今回の政策転換を踏まえ、来夏にも決定する改定計画では石炭依存度のさらなる引き下げも視野に入れる。

 一方、現行計画では18年度に17%だった太陽光など再生可能エネルギーを最大24%に引き上げる。ただ再エネは天候などで出力が左右され、ベースロード電源の石炭火力と比べると不安定だ。代替としての役割を果たせるか疑問が残る。

 CO2削減と電力の安定供給を両立させていく上で欠かせないのは原発の活用である。石炭火力が減れば、その必要性はますます高まろう。

政府は方針を明示せよ

 東日本大震災後、原発は廃炉が決まったものを除く33基中、再稼働したのは9基にすぎない。エネルギー基本計画では30年の原発比率を20~22%とする一方、新増設や建て替えの是非には触れていない。

 石炭火力削減の方針を踏まえ、政府は原発新増設の方針を明確に打ち出すべきだ。