商業捕鯨再開1年 捕鯨文化の内外発信が必要だ


 商業捕鯨が再開されて1日で1年となった。当初懸念された国際社会の激しい反発はないものの、日本の捕鯨文化が国際的に認知され理解を得たわけではない。持続可能な商業捕鯨を軌道に乗せるために、内外への働き掛けを強める必要がある。

 EEZ内で年383頭

 日本は昨年6月、国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、7月に31年ぶりに商業捕鯨を再開した。領海と排他的経済水域(EEZ)内で、十分な資源量が確認されているミンククジラ、ニタリクジラ、イワシクジラの年間383頭に限る。脱退前に南極海と北西太平洋で行っていた調査捕鯨からは撤退した。

 捕鯨再開に対しては反捕鯨国の非難の高まりによる外交的な孤立を危ぶむ声があったが、それほどの動きはなかった。ただ、これは新型コロナウイルス対策に世界の目が行っていることも一因と考えられる。科学的なデータに基づいた資源保護と利用の両立という日本の考え方が受け入れられたためではない。

 IWCには依然オブザーバーとして参加し、南極海での目視による資源調査も続ける日本としては、将来の商業捕鯨の拡大を念頭に、持続可能な捕鯨の在り方とそのベースにある捕鯨文化を発信し続けるべきある。

 商業捕鯨再開で沿岸捕鯨ができるようになり、捕獲するクジラの鮮度が増したことなどで、青森県八戸市の卸売市場では当初、主要部位の赤肉が1㌔3000~4000円の高値を付けた。しかし6月には豊漁と新型コロナの影響による外食自粛で、半値以下に落ち込んだ。

 一方、母船式による沖合捕鯨が供給する冷凍鯨肉はスーパーなどで底堅い需要があり、遠からず供給不足となると業者は見ている。しかし、将来的には若い世代の消費が伸びなければ、捕鯨産業の自立はますます難しくなる。若い世代は鯨肉を食べた経験がなく、メディアの影響で捕鯨が時代に逆行しているかのような印象を持っている。クジラの味や日本の自然共生型の捕鯨文化を伝える必要がある。

 調査捕鯨では2000~2400㌧捕っていたのが、商業捕鯨では最大でも1500㌧に減少する。資源保護との両立を考えれば、捕鯨枠の拡大はEEZ外での操業を考えなければ難しい。地球規模の食料問題の解決という観点からも、EEZ外への捕鯨拡大を進めることで持続可能な形を作っていくことが求められる。

 現在のところ、最も資源量の多いのは、南極海のミンククジラ(推定52・5万頭)である。日本が南極海での調査捕鯨から撤退したことで、ミンククジラが増え過ぎ、海域の生態系のバランスを崩す可能性もある。資源の有効な利用のためにも、南極海での調査捕鯨への復帰が望ましい。

 従来以上の外交努力を

 商業捕鯨を続けながらIWC復帰の道を探るべきである。実際に2002年、アイスランドが商業捕鯨モラトリアム(一時停止)に拘束されないとの条件を付けて復帰した例がある。そのためにも反捕鯨国の反対をやり過ごすことで満足するのでなく、これまで以上の外交的努力と発信が必要だ。