感染者過去最多 メリハリ利いた対策が重要だ


 東京都での新型コロナウイルスの新たな感染者数が、昨日は243人となり2日連続で過去最多となった。無観客で行ってきたプロ野球やサッカーJリーグの試合も、人数を制限しながらではあるが観客の入場を始めた。社会経済活動を進めながら感染拡大を抑えるには、メリハリの利いた予防策が重要だ。

「夜の街」で拡大続く

 2日連続で都の感染者が過去最多となったことを受け、菅義偉官房長官は「直ちに緊急事態宣言を発出する状況に該当するとは考えていない」と述べた。その理由として、PCR検査を積極的に行っていること、医療提供体制が逼迫(ひっぱく)していないこと、陽性者の8割近くが39歳以下の人々で占められていることを挙げた。

 接待を伴う飲食関係で積極的に検査を受ける数が増えており、1日3000件を超えることもある。こういった限られた業種での感染者の拡大のため、経済社会活動の全体を止めることはできない。拡大が続いている業種・地域へのピンポイントの対策が合理的だ。

 西村康稔経済再生担当相と小池百合子都知事は、都の新宿、豊島両区長、感染症対策の専門家を交えた会議で「夜の街」の感染予防策について話し合った。会議では①戦略的PCR検査の実施②メリハリの利いた感染予防策③保健所機能の強化――などの対策がまとめられた。接客を伴う飲食店では、ガイドラインに沿って感染予防策を徹底することが求められ、それを国や都、区が連携して支援していくことも確認された。

 一方で、無症状や軽症の人が多く、重症患者が少ないという現状に対し、専門家からは重症化は感染してから1~2週間後に起き、決して楽観してはいけないとの指摘がある。

 また、重症化することは少ないとされる若い人々に感染が拡大しているのは、感染を軽く見る傾向があるためとも考えられる。しかし、若い人でも重症化し重い後遺症に苦しむケースがある。

 若者から中高年に感染が広がるリスクも高くなり、家庭内で親が感染する例も出ている。中高年に比べ、新聞、テレビを見ることの少ない若い世代への正しい情報の発信も課題だ。

 プロ野球、Jリーグの観客を入れての開催は、人数制限のほか、体温検査、大声で応援しないことなど、さまざまな予防策が取られている。それでも、選手やファンにとっては待ちに待った開催だ。8月1日からは、観客入場数も収容可能人数の50%まで増える。

 ガイドラインに沿ったさまざまな制約を守ることによって、クラスターを出さないで試合が続けられれば、イベント開催のモデルとなる。観客以外の人々にも、ルールを守れば感染は防げるという大きな安心感と自信を与えるのではないか。

注意深く予防策実行を

 感染者の急増は、経済社会活動の活発化で感染リスクが高まったと捉える必要がある。経済活動と予防の両立は、政府が強制措置を取れない以上、一人一人が注意深く、マスク着用、手洗い、3密回避などを実行していくことにかかっている。