安全な核燃料施設の運行のための審査を
日本原燃は、青森県六ケ所村で建設を進めてきた使用済み核燃料再処理工場の稼働に向け、その前提となる新規制基準への適合性審査(安全審査)を原子力規制委員会に申請した。
再処理工場は核燃料サイクル政策の中心施設であり、規制委の速やかな審査を求めたい。
新基準にテロ対策も
全国には計250におよぶ核燃料施設と試験研究炉があり、これらの新規制基準が昨年12月に施行された。今回の日本原燃の申請が初めてとなる。
再処理工場では使用済み燃料からまだ使えるウランやプルトニウムを取り出す。強い放射線を出す高レベル放射性廃液はガラスと混ぜ、比較的保管しやすい固化体にして一時貯蔵する。
新たな基準は原子力発電所のものと同様に、東日本大震災を教訓に想定を超える地震や津波、テロ行為などによる重大事故への対応や、施設に影響を与える可能性がある活断層の有無の適格な判断などを盛り込んでいる。
これに対し原燃は移動式ポンプや放水設備の配備、防水扉などの設置のほか、想定する地震の揺れ(基準地震動)を450ガルから600ガルに見直し、一部設備の耐震補強工事などを行っている。審査に6カ月、工事と最終検査に4カ月かかると見込み、10月の工場完成を目指している。
原子力関連施設のうち、原発の安全審査は既に半年を過ぎている。しかし、審査の終了時期は見えていないのが現状だ。一方、核燃料施設では今回審査を申請した原燃が「活断層ではない」と判断している太平洋沖の大陸棚外縁断層(南北約80㌔㍍)について、規制委は独自に調査している。両者の相違が顕在化すれば審査が長引く可能性もある。
もちろん、規制委による活断層の有無の判断は重要だ。しかし、40万年前までさかのぼって判断するのは現実的ではない。さらに、断層調査に登用される学者の専門が偏っているとの指摘もある。規制委は幅広い意見に耳を傾けるべきだ。
規制委が発足したのは、単に原子力を規制することが目的ではない。原子力関連施設をいかに安全かつ円滑に運行させることができるか――そのことを再確認すべきだ。
事故の根絶を目指すとともに、いかに減災を進めていくかという方策こそ、福島第1原発事故を起こし、事故への対応を遅らせた“絶対安全神話”を克服する道である。
福島第1原発1~3号機は炉心溶融という事故となったが、5~6号機は冷温停止した。近距離にあった福島第2原発や宮城県の女川原発、茨城県の東海原発なども同様である。
このことは、自然の脅威に対して適切な手段を取れば重大な事故を防げることを示すものだと言える。
期待される早期稼働
一方、軽水炉による原子力エネルギーの利用は資源上限界がある。原発の効率性を現在のレベルに保っているだけでは未来はないのである。核燃料サイクルを目指す原燃の再処理工場が、できるだけ早期に稼働することを期待したい。
(1月19日付社説)