日米同盟 情勢悪化踏まえ抑止力向上を
沖縄県・尖閣諸島沖で中国海警船が過去最長の期間にわたって確認され、朝鮮半島では北朝鮮が南北共同連絡事務所を爆破するなど韓国への挑発を続けている。こうした情勢の悪化を踏まえ、日米同盟の重要性を改めて確認したい。
尖閣沖で挑発強める中国
尖閣沖の接続水域では21日、中国海警船の航行が69日連続で確認され、2012年9月の尖閣国有化以降で最長の連続日数を更新した。5月には、尖閣沖の領海内で中国海警船が日本漁船を追尾した事案も生じている。尖閣を守るには、自衛隊の活動を定めた法制度の整備とともに、日米同盟強化による抑止力向上が不可欠だ。
朝鮮半島の情勢悪化も懸念される。北朝鮮による韓国への挑発については、健康不安を抱える金正恩朝鮮労働党委員長が後継者として育てようとしている妹の金与正党第1副部長の指導力を誇示する狙いとの見方も出ている。
不測の事態に備える上で、日米同盟の重要性が一段と増している。特に、朝鮮半島をにらむ要衝の沖縄に駐留する米軍の存在は大きい。自衛隊との相互運用性も高める必要がある。
安倍晋三首相は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設について「世界で最も危険と言われている普天間飛行場の固定化は絶対に避けなければならない」と指摘。「検討を重ねた結果が、辺野古移設が唯一の解決策という方針だ」と強調した。
首相の発言は、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画停止を受け、沖縄県の玉城デニー知事が辺野古移設も断念するよう要望したことに反論したものだ。陸上イージスの配備停止は残念だが、辺野古移設は着実に進める必要がある。コロナ禍の中ではあるが、日米両国は共同演習もできる限り実施すべきだ。
一方、米ホワイトハウスは3月、トランプ大統領が次期駐日大使に、ワシントンの多くの研究機関の中でも古い伝統を持つ保守系シンクタンク「ハドソン研究所」のケネス・ワインスタイン所長を指名すると発表した。同氏は11年3月に所長に就任した外交や安全保障の専門家。昨夏には日本部門を新設し、マクマスター元大統領補佐官(国家安全保障担当)を日本部長に招いた。
ハドソン研究所はトランプ政権と最も近いシンクタンクとして影響力を持つ。18年10月にペンス副大統領が「邪悪な中国共産党」との戦いを国民に呼び掛けた演説も同研究所で行われたものだ。
ワインスタイン氏自身も論文などで、中国が掲げるシルクロード経済圏構想「一帯一路」に警鐘を鳴らしてきた。今後、上院での任命承認を経て東京に赴任する。同氏の大使就任は日米関係を強化するには最適だと言える。
地域の安定に寄与せよ
日米両国は自由、基本的人権の尊重、法の支配などの普遍的価値を共有する民主主義国家である。独裁国家である中国や北朝鮮と厳しく対峙(たいじ)し、地域の安定と発展に大きく寄与することが求められる。