熱中症対策 マスクによるリスク回避を


 これからの時期は、新型コロナウイルスの感染拡大防止策とともに熱中症への注意も必要となる。
 高温多湿の中でのマスク着用は熱中症のリスクを高めるため、屋外では他の人との距離を十分に確保した上でマスクを外すことを心掛けたい。

体の熱が放出されにくい

 政府の専門家会議が示した「新しい生活様式」では、外出の際に会話する時などは、症状がなくてもマスクを着けるよう求めている。新型コロナの感染第2波に備え、マスク着用や手洗いの徹底など対策をおろそかにすることはできない。

 一方、マスクによって熱中症になるリスクが高まっている。マスクを着けると体の熱が放出されにくくなって体内温度が上がるが、口の中は湿っているため、水分が足りていると錯覚して脱水症状を起こし、熱中症になる危険性がある。熱中症に詳しい専門家は「誰も経験したことのない夏になる」として例年以上に備えを徹底するよう呼び掛けている。

 消防庁によると、昨年5月から9月に全国で熱中症で救急搬送された人は7万1317人、死者は126人に上る。今月も7日までに1194人が救急搬送されている。熱中症による発熱と新型コロナの症状を区別できない場合、受け入れの搬送先が見つからず治療が遅れる恐れもある。

 新型コロナの感染拡大が続く中、熱中症に対する警戒も求められる。特に、日頃から水分が不足しがちな高齢者や、水分を蓄える筋肉の量が少ない子供は熱中症になりやすいので、家族や周囲の人たちも注意を払わなければならない。

 気象庁の予報によると、今年の夏の気温は全国的に平年より高い。今月に入って、早くも35度以上の猛暑日となる所も出ている。今年は外出自粛による運動不足で暑さに慣れていないことも熱中症のリスクを高める要因となっている。

 環境省と厚生労働省は「新しい生活様式」における熱中症予防のポイントとして、屋外で他の人と十分な距離(2㍍以上)を確保できる場合はマスクを外すことを挙げている。熱中症予防も、密閉、密集、密接の「3密」を避けることが大前提だ。マスク着用時には負荷のかかる作業や運動をしないことも熱中症予防につながる。

 小まめな水分補給やエアコンの活用など従来の対策ももちろん重要だ。大量に汗をかいた際には塩分の補給も欠かせない。体調に異変を感じた時は、すぐに涼しい場所に移動したい。

 ただエアコンを使う場合は、新型コロナ感染対策のため、部屋を密閉せずに、窓を開けたり換気扇を使用したりして換気を行う必要がある。

 換気すると室温が高くなるので、エアコンの温度設定を下げることも欠かせない。室内にいても熱中症にかかる場合があるため、室温の調整はしっかりと行うことが求められる。

コロナ予防と両立したい

 今年の夏は、新型コロナ感染対策と熱中症予防の両立が求められる。

 未曽有の夏であるが、工夫して猛暑を乗り切りたい。