緊急事態宣言解除 新たな日常の中で段階的に
政府は新型コロナウイルス感染症対策で、東京、神奈川、千葉、埼玉の首都圏1都3県と北海道で継続していた緊急事態宣言を解除した。完全な日常を取り戻すまで長い戦いになることを念頭に一歩一歩前に進んでいきたい。
感染抑えつつ経済再開へ
解除の基準は、直近1週間の新たな感染者数が人口10万人当たり0・5人以下だ。基準に満たない北海道なども専門家会議が総合的に判断した。
移動制限については、海外のような強制措置ではなく、国民への要請の形で進められた。安倍晋三首相は、世界的にも極めて厳しい解除基準をクリアしたと指摘。「1カ月半でほぼ収束させ、日本モデルの力を示した」と述べ、国民そして医療従事者への感謝を表明した。
緊急事態に処する法的な課題も明らかとなったが、国民の協力によってここまでこられたこと自体は、誇っていい。
問題は感染の再拡大を抑えつつ、経済活動を再開させていくという難しい課題をどう達成するかだ。首相は「新たな日常を作り上げるために発想を変えていく」必要を訴えた。感染の危険性が常にあるという認識はほとんどの国民が共有しており、そのための行動変容は進んでいるが、それぞれが主体的な工夫を凝らしていく時である。
首相は「自由、民主主義、法の支配という普遍的価値を堅持し、こうした価値を共有する国々と手を携え、自由かつ開かれた形で世界の感染対策をリードしていく」と述べた。新型コロナの発生時に情報を隠蔽(いんぺい)し、今は「マスク外交」を展開する中国を念頭に置いたのだろう。具体的には、途上国にもワクチンや治療薬を供給するため、特許権を一元的に管理する枠組みの創設を先進7カ国首脳会議(G7サミット)で提案する考えを示した。ぜひ実現してほしい。
100年に1度と言われる経済危機を乗り越えるために政府は、第1次と合わせて事業規模200兆円を超える第2次補正予算を準備している。休業要請に応え、厳しい状況に追い込まれている店舗の賃貸料負担軽減のために最大600万円の給付金も創設される。できるだけ早く手元に届くようにすべきだ。
第2波を想定し、検査体制強化や病床の十分な確保など医療提供体制のさらなる充実も必要だ。感染対策の最前線で戦う医療従事者への給付金支給も速やかに行ってもらいたい。
ワクチン開発にはまだまだ時間を要し、新型コロナとの戦いは長丁場となる。濃厚接触者を速やかに探し出すスマートフォンのアプリを来月中旬に導入するのも期待したい。
プロ野球が6月19日に無観客ではあるが、公式戦を開幕するのも明るい話題だ。観客を段階的に入れていく方式を取るが、全ての活動は段階的に前に進めていくことが肝要だ。
「新しい生活様式」継続を
再び感染拡大のスピードが増すようであれば、第2の緊急事態宣言発令もあり得る。マスク着用や手洗いを徹底し、「3密」を避けるなど「新しい生活様式」を継続しながら、感染防止と経済活動再開の両立を成し遂げていきたい。